大楠安紀ブログ

9月20日(土)と21日(日)にジャズライブを行いました。
たくさんのお客様に来て頂き、楽しい時間を過ごすことができました。
時に、宇奈月セレネのピアノ、滑川カフェコラレッカのピアノともに素晴らしく鳴ってくれました。
2日間で35曲演奏しました。1年分演奏した感じです。




セレネ月いちライブ

日時:9月20日(土)14:00から
会場・主催・お問い合わせ 黒部市芸術創造センター
場所:〒938-0282 富山県黒部市宇奈月温泉6-3
Tel.0765-62-2000
入場無料:1オーダー制▶500円

大楠安紀ピアノトリオ
大楠安紀(ピアノ)
中島伸高(ベース)
佐野友重(ドラムス)



set list

first
1-1 Alfie (Burt Bacharach)
1-2 Blackbird (Paul McCartney)
1-3 I Got It Bad And That Ain't Good (Duke Ellington)
1-4 Valse Hot (Sonny Rollins)
1-5 Ruby My Dear (Thelonious Monk)
1-6 How My Heart Sing (Earl Zingers)
1-7 Mood Indigo (Duke Ellington)
1-8 All Of You (Cole Porter)

Second
2-1 Eronel (Thelonious Monk)
2-2 Isfahan (Billy Strayhorn)
2-3 Tadd's Delight (Tadd Dameron)
2-4 Someday My Prince Will Come (Frank Churchill) :
2-5 Solitude (Duke Ellington)
2-6 Nardis (Miles Davis)
2-7 Lush Life (Billy Strayhorn)
2-8 Three Views of a Secret (Jaco Pastorius)

encore When You Wish Upon A Star (Leigh Harline)

曲紹介
First (ジャズの歌心と抒情)
1-1 Alfie (Burt Bacharach)
 1966年の映画『アルフィー』の主題歌として作曲され、翌年グラミー賞を受賞したバート・バカラックの代表作です。多くのヴォーカリストに歌われていますが、個性的なメロディとコード進行によりジャズピアニストにも好まれ、ビル・エヴァンスをはじめ多くの演奏が残されています。
1-2 Blackbird (Paul McCartney)
 ビートルズの楽曲で、ポール・マッカートニーが単独で作曲しました。シンプルに聴こえますが、譜面にすると意外に複雑な構造を持っています。ジャコ・パストリアスなどによるジャズでの名演も多く、今回はブラッド・メルドーのアレンジを基に演奏します。
1-3 I Got It Bad And That Ain’t Good (Duke Ellington)
 デューク・エリントンが作曲した名バラードです。私が福田重男氏に師事した頃、初めて自分でヴォイシングを工夫し、師に認めてもらった思い出の曲でもあります。ビル・エヴァンス最初のアルバムアレンジをベースにしています。
1-4 Valse Hot (Sonny Rollins)
 ソニー・ロリンズが1956年、クリフォード・ブラウン=マックス・ローチ・クインテットと録音したアルバム Sonny Rollins Plus 4 のために書いた曲です。タイトル通り3拍子の熱いジャズワルツで、ロリンズの代表曲のひとつとなりました。この録音の直後、ブラウンは事故で急逝しており、最後の公式録音となったことでも知られています。
1-5 Ruby, My Dear (Thelonious Monk)
 モンクの代表的なバラードで、「’Round Midnight」に次ぐ人気を誇ります。奇才として知られるモンクですが、彼のバラードは高度に練り上げられた音楽性を持ち、複雑さと美しさが共存しています。本曲もエリントン作品を思わせる流麗な抒情性を備えています。
1-6 How My Heart Sings (Earl Zindars)
 ビル・エヴァンスのアルバム Moon Beams(1962年)に収録された、盟友アール・ジンダースの作品です。エヴァンスの歌心を体現したこの曲は、モダンジャズ・ピアノの新しいスタイルを象徴しています。ややこしい曲ですが、エヴァンスのイメージを意識して演奏します。
1-7 Mood Indigo (Duke Ellington)
 1930年に作曲されたエリントンの代表曲。クラリネットを低音域、トロンボーンを高音域に配するという独創的なオーケストレーションで話題を呼びました。今回はその音響効果を生かしつつ、ピアノとベースの音数を最小限にしたバラードとして演奏します。AメロとBメロの対比にご注目ください。
1-8 All Of You (Cole Porter)
 1954年のブロードウェイ・ミュージカル Silk Stockings のために書かれたコール・ポーターの洒脱なラブソングです。相手のすべてを愛するというユーモラスで都会的な表現が魅力で、ジャズでも多く演奏されました。マイルス・デイヴィスはこの曲を好んで取り上げ、特に後期にはモーダルな解釈へと発展させています。

Second (ジャズの革新と多様性)
2-1 Eronel (Thelonious Monk)
 セロニアス・モンクの作品の中では、比較的柔らかく親しみやすい雰囲気を持つナンバーです。モンク特有のユーモアやひねりは感じられつつも、他の代表作に比べると「毒気」は少なく、洒落たムードの演奏が多く残されています。
2-2 Isfahan (Billy Strayhorn)
 1967年のアルバム Far East Suite に収められたストレイホーンの傑作バラード。タイトルはイランの古都イスファハンに由来します。ジョニー・ホッジスのアルトサックスによるオリジナル演奏が決定版とされ、都会的で洗練された抒情が感じられる曲です。
2-3 Tadd’s Delight (Tadd Dameron)
 「ビバップのロマンティスト」タッド・ダメロンの快活なナンバー。1951年にマイルス・デイヴィスが録音して有名になりました。日本でも人気の高いピアニスト、ソニー・クラークが1957年のトリオ録音で取り上げたことでも親しまれています。今回はそのアレンジを手本に演奏します。
2-4 Someday My Prince Will Come (Frank Churchill)
 1937年のディズニー映画『白雪姫』の挿入歌です。多くのポピュラー曲がジャズで取り上げられるなか、この曲は特に有名で、マイルス・デイヴィスやビル・エヴァンスの名演によってスタンダード化しました。やさしいワルツのリズムにのせ、繊細なハーモニーと美しいフレーズが広がります。
2-5 Solitude (Duke Ellington)
 1934年にエリントンが作曲した名曲。調の基音に達しない旋律が孤独感を際立たせています。シンプルながら深い情感を持ち、ビリー・ホリデイが生涯を通じて歌い続けたことで、彼女の代表曲のひとつにもなりました。
2-6 Nardis (Miles Davis)
 1958年、マイルス・デイヴィスがキャノンボール・アダレイのアルバムのために作曲しましたが、自身は演奏していません。その後、ビル・エヴァンスが生涯にわたり取り上げ、即興の可能性を探求し続けたことで、彼の代表的レパートリーとなりました。東洋的で神秘的な響きを持つモード・ジャズの名曲です。
2-7 Lush Life (Billy Strayhorn)
 若きストレイホーンが20代前半で書き始め、長年かけて完成させた代表作です。都会の孤独や酔いどれの人生を歌う歌詞と、緻密で美しいメロディが結びつき、彼の人生観を体現する曲となりました。歌・器楽ともに数多く演奏されるジャズ史上の名曲です。
2-8 Three Views of a Secret (Jaco Pastorius)
 革新的なエレクトリックベーシスト、ジャコ・パストリアスの代表曲のひとつ。ウェザー・リポートのアルバム Night Passage に収録され、その後自身のバンドでも繰り返し演奏しました。独創的ながらジャズの伝統を感じさせる構成を持ち、作曲家としての彼の才を示す作品です。

Cafe Collarecca 2025 Autumn Jazz Live

9月21日(日)14時と16時の2回公演
飲み物付チケット1,500円
住所:滑川市田中町154
Tel.076-441-9143

居村猛&大楠安紀カルテット
居村猛(ギター)
大楠安紀(ピアノ)
中島伸高(ベース)
佐野友重(ドラムス)



first
1-1 Boplicity (Cleo Henry)
1-2 Morning Blues (Michel Petrucciani)
1-3 Milestones (John Lewis)
1-4 Prelude to a Kiss (Duke Ellington)
1-5 Desafinado (Antonio Carlos Jobim)
1-6 Isotopo (Joe Henderson)
1-7 Left Alone (Mal Waldron)
1-8 Raunchy Rita (Frank Foster)
encore Friday Night At The Cadillac Club (Bob Berg)

second
2-1 Lotus Blossom (Kenny Dorham)
2-2 I Don't Stand A Ghost Of A Chance (Victor Young)
2-3 Dear Old Stockholm
2-4 Everytime We Say Goodbye (Cole Porter)
2-5 Menina Moça (Aquarius Y Luiz Antonio)
2-6 Capri (Gigi Gryce)
2-7 Darn That Dream (Jimmy Van Heusen)
2-8 Driftin’ (Herbie Hancock)
encore Sophisticated Lady (Duke Ellington)

曲紹介
first:ブルースに敬意を表して
1-1 Boplicity (Cleo Henry)
 ジャズ界の帝王マイルス・デイヴィスは、生涯で演奏スタイルを大きく変えていったことで有名です。BeBop、Cool、Mood、Electric、Hip Hopなど、その変遷はファンの間でも議論の的になります。私は少数派かもしれませんが、Cool時代のマイルスが一番好きです。その代表作が1957年発表のアルバム『クールの誕生』であり、その代表曲が「バプリシティ」です。
 作曲者のCleo Henryは著作権の関係によるマイルスの偽名で、実際はマイルス自身の作曲といわれています。ギル・エヴァンスによる9人編成のバンドアレンジをなるべく再現するようにピアノ編曲をしています。

1-2 Morning Blues (Michel Petrucciani)
 日本を代表する女性ピアニスト・大給桜子さんは、病気療養のため魚津市に滞在されましたが、残念ながら1999年夏に亡くなられました。
彼女が好んで演奏した曲の一つが、ミシェル・ペトルチアーニ作曲の「モーニング・ブルース」です。
 少し憂いを帯びながらも優しく温かいメロディーが深いハーモニーに彩られ、美しく切ない雰囲気を感じさせる曲です。

1-3 Milestones (John Lewis)
 マイルス・デイヴィスが初めてリーダーとして録音した際、当時在籍していたチャーリー・パーカーのバンドメンバーをそのまま借りて演奏しました。その時に録音された「マイルストーンズ」は、名義上はマイルス作曲ですが、実際はピアニストのジョン・ルイスが作曲したといわれています。
 この経緯は、後にマイルス自身が同名の新しい「マイルストーンズ」を作曲したことからもうかがえます。
 なお、この初録音では、チャーリー・パーカーがサイドマンであることを示すために、珍しくテナーサックスを演奏しています。

1-4 Prelude To A Kiss (Duke Ellington)
 半音階を多用した複雑な進行を持つ、洗練されたエリントンの代表的な楽曲です。ジャズの革新者である彼を象徴する曲といえます。
 複雑さを感じさせない、滑らかで美しいメロディーを表現したいと思っています。

1-5 Desafinado (Antonio Carlos Jobim)
 「デサフィナード」とは、ポルトガル語で「音外れ」を意味します。歌詞に初めて「ボサノヴァ」という言葉が使われた曲としても有名です。
愛する人に「音痴」と言われても、「君への思いがあふれて歌っているんだ」と返す内容の歌です。メロディーには音外れを思わせるようなフレーズもありますが、テンションノートや転調を巧みに用いたユニークかつ精緻な作りで、ジョビンの天才ぶりがよくわかります。クラシックやジャズに対するボサノヴァのアンチテーゼとも解釈できます。

1-6 Isotope (Joe Henderson)
 ジョー・ヘンダーソンは生涯にわたり正統派ジャズを追求し、晩年に大きな脚光を浴びた音楽家です。デビュー作『ページ・ワン』に収録された「ブルー・ボッサ」や「レコルダ・メ」は、セッション定番曲として広く演奏されています。
 「アイソトープ」は、傑作アルバム『インナー・アージ』に収録された曲で、セロニアス・モンクにオマージュを捧げたブルースです。

1-7 Left Alone (Mal Waldron)
 ジャズ・ヴォーカル史上最高の歌手と称されるビリー・ホリデイが作詞し、晩年に伴奏を務めたマル・ウォルドロンが作曲しました。残念ながらビリー自身の録音は残っていません。
 この曲はマル・ウォルドロンの代表作であり、一時は日本でも大人気でしたが、近年はあまり耳にする機会が減ったように思います。短調の陰鬱なムードを持ちながら、コード進行を追うと凝縮された世界観が広がり、マルの知性を感じさせます。
 1982年4月24日、彼は朝日町大平の廃校跡でソロ演奏を披露し、「レフト・アローン」を含む代表曲を聴かせてくれました。特別な夜となりました。

1-8 Raunchy Rita (Frank Foster)
 エルヴィン・ジョーンズ(ds)とリチャード・デイヴィス(b)による1967年のアルバム『ヘヴィ・サウンズ』の冒頭を飾る曲です。古いブルースをイメージして作曲されたナンバーで、洗練されたジャズとは対照的な泥臭い雰囲気を持っています。
 リチャード・デイヴィスはクラシック界で活躍後、アーマッド・ジャマルやサラ・ヴォーンのバンドに参加。その後はエリック・ドルフィーやサド・メル・オーケストラで世界的なプレイヤーとなりました。
 『ヘヴィ・サウンズ』は彼らにとって初のリーダー作で、その1曲目に収録されているのが「ランチー・リタ」です。二人は日本にもよく来日し、多くの若手ミュージシャンに影響を与えました。

second:ジャズの多彩な表情を凝縮して

2-1 Lotus Blossom (Kenny Dorham)
 ケニー・ドーハムの代表曲で、1959年の名盤『静かなるケニー』の冒頭に収録されています。印象的なメロディーを持つハードバップの佳曲として、多くの演奏家に親しまれています。
なお、この曲は「Asiatic Raes」と表記されることもあり、同名のビリー・ストレイホーン作品との混同を避ける意味合いがあるようです。

2-2 I Don’t Stand A Ghost Of A Chance (Victor Young)
 「ほのかな望みもなく」は、歌手ビング・クロスビーの作詞による曲で、彼の出世作となりました。アメリカのポピュラー音楽には 「トーチソング」というジャンルがあり、報われない片思いや失恋を嘆く歌を指します。この曲はその典型例といえます。(日本でいうと演歌に近いかもしれません)

2-3 Dear Old Stockholm (traditional)
 ジャズ・スタンダードとして知られる曲ですが、もとはスウェーデンの民謡です。スタン・ゲッツがヨーロッパツアーでこの旋律を知り、ジャズとして演奏するようになりました。その後、マイルス・デイヴィスをはじめ多くのジャズミュージシャンが取り上げています。
 マイナー調を基調にモーダルな展開が強調され、シンプルながら即興の自由度が高い曲として愛されています。

2-4 Everytime We Say Goodbye (Cole Porter)
 「Everytime we say goodbye, I die a little(さよならを言うたびに、私は少し死ぬ)」という歌詞は、コール・ポーター作の名曲「いつもさよならを」に登場する一節で、後にレイモンド・チャンドラーの小説『ロング・グッドバイ』でも引用され有名になりました。
 ポーターは作曲と作詞をともに手がける希少な存在で、曲と詩の融合が見事です。ジョン・コルトレーンの名盤『マイ・フェイヴァリット・シングス』にも収録され、ライブでは常に表題曲とセットで演奏されました。コルトレーンはテーマだけを吹き、アドリブは若きマッコイ・タイナーが担当しています。

2-5 Menina Moça (Aquarius & Luiz Antonio)
 ボサノヴァはブラジルで生まれ世界に広まりましたが、すべてのヒット曲が国際的に知られたわけではありません。この「メニーナ・モッサ」は「イパネマの娘」と同時期にブラジルでヒットした曲で、シンプルながら耳に残るメロディーを持っています。

2-6 Capri (Gigi Gryce)
 ハードバップの名曲の一つで、多くの演奏家に取り上げられています。作曲者ジジ・グライスは1950年代に活躍した優れたサックス奏者で、作編曲家としても高く評価されました。しかし1960年代に突然ジャズのキャリアを終え、惜しまれました。

2-7 Darn That Dream (Jimmy Van Heusen)
 「いやな夢」は、ジミー・ヴァン・ヒューゼン作曲、エディ・デランジ作詞の人気曲です。1939年に出版され、1940年にはベニー・グッドマン楽団が録音し、ボーカルはミルドレッド・ベイリーが担当しました。この録音は第1位にランクされ、一世を風靡しました。恋人への一途な思いを歌った曲です。

2-8 Driftin’ (Herbie Hancock)
 チック・コリアやウェイン・ショーターが亡くなった今、ジャズ界の現役レジェンドといえば真っ先に名が挙がるのがハービー・ハンコックです。彼は21歳の時、アルバム『テイキン・オフ』でデビューしました。
 このアルバムに収録された「ウォーターメロン・マン」は1963年、モンゴ・サンタマリアのカヴァーで大ヒットし、ハンコックは一躍注目を浴びました。『テイキン・オフ』の収録曲はすべてハンコックのオリジナルで、「ドリフティン」もその一つです。ファンキーな魅力が詰まった名曲です。


ブログ記事一覧