木造住宅耐震改修研究所コラム

最新データで読み解く富山県の大地震リスク / 令和6年能登半島地震後の地震予測を徹底解説

令和6年能登半島地震(2024.1.1発生)を経て、今後の富山県での大地震の可能性について


2024年1月1日に発生した令和6年能登半島地震(M7.2 最大震度7)。
この大地震により、石川県能登地方を中心として石川県、富山県、新潟県などで甚大な被害がありました。

富山県内では1,000棟以上の家屋が全・半壊し、一部損壊を含めると21,980棟もの家屋が被災しました。
現在(2024年12月現在)も被災地では復旧活動が行われています。

大きな地震が長い年月発生していなかったことから、富山県民の間には「富山県は地震が少ない」というイメージがありました。
しかし、その安心・安全感は令和6年能登半島地震によりかなり薄れた印象があります。

2024年11月26日 石川県西方沖地震(M6.6 最大震度5弱)
2024年11月26日には石川県西方沖を震源とするマグニチュード(M)6・6 / 最大震度5弱があり、富山県内でも最大震度4の揺れが観測されました。
2024年1月1日の大地震以降、能登地方周辺では地震活動が活発になっており、まだまだ油断ができない状況です。

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令和6年能登半島地震の発生を経て、今後の富山県ではこれまでのように「地震の少ない県」であり続けるのでしょうか。
今回の記事では、今後富山県で想定されている大地震発生の可能性やその想定被害について詳しく解説します。


引用 / 北日本新聞 号外 2024/1/2

引用 / 北日本新聞 号外 2024/1/2


引用 / 北國新聞 特別号外 2024/1/1

引用 / 北國新聞 特別号外 2024/1/1



過去100年に起きた大地震の数は"全国最少”の富山県

地震が少ない印象の富山県ですが、過去100年間(1925年〜2024年)までの震度5以上の地震を調べてみると、実際に発生回数が大変少ないことがわかります。

該当する大きな地震は
1)1930年:大聖寺地震(最大震度5)
2)2007年:能登半島地震(最大震度6強)
3)2024年:令和6年能登半島地震(最大震度7)
の3回しかありません。

上記のそれぞれの地震の富山県での震度は以下のとおりです。
1)1930年:大聖寺地震(高岡市で震度5弱)
2)2007年:能登半島地震(富山市、射水市、小矢部市、氷見市、滑川市などで震度5弱)
3)2024年:令和6年能登半島地震(富山市、舟橋村、高岡市、氷見市、小矢部市、南砺市、射水市などで震度5強)

過去3回の大きな地震の震源地

下の地図が示すように、3回の地震はどれも石川県の沿岸部を震源地としています。


過去100年間に富山県で震度5弱以上を観測した地震

過去100年間に震度5弱以上の地震が「3回」という富山県の数字は、岐阜県、愛知県、大阪府、香川県、福岡県、佐賀県などと並んで全国で最も少ない発生回数です。
隣接する石川県は32回、新潟県は40回、長野県は30回であり、近隣県と比較した場合にも大変少ない印象を受けます。

また、富山県は令和6年能登半島地震より前の2回の地震で大きな被害も受けていませんでした。

これらの事実が背景となって「富山県は地震が少ない県だ」という意識が富山県民の間に醸成されてきていました。



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富山県に地震が少ない理由

では、なぜ富山県は『地震が少ない県』なのでしょうか?

富山県に地震が少ない理由はおもに2つ考えられます。

理由1:富山県周辺には震源域のある海溝型地震がない

まず一つ目は、富山県で想定される地震の種類が「内陸型地震」であるということです。

内陸型地震は活断層の活動により起こる地震ですが、活断層の活動サイクルは「数千〜数万年」と大変長い期間になります。
一方、「海溝型地震」と呼ばれる、地球を覆う巨大なプレートが起こす地震のサイクルは「数十〜数百年」と短いため、海溝型地震が起きるエリアでは地震回数が多くなる傾向があります。

富山県の周辺には震源域のある海溝型地震がありません。

サイクルの短い海溝型地震の影響を受けにくいことから、大きな地震の発生回数が少ない可能性があります。


地震調査研究推進本部「活断層で発生する地震と海溝型地震」

地震調査研究推進本部「活断層で発生する地震と海溝型地震」


理由2:立山に守られている!?

「富山は立山連峰が守ってくれるから災害が少ない」

これは、台風や豪雨、地震などの災害の話題の際に富山ではよく聞く言葉です。

一見迷信のようですが、実は地震に関してこの言葉を裏付けるような研究結果が報告されています。

立山地下に存在する「何か」が地震波を減衰させる

地震による各地の揺れの観測により、以前から「立山を含む飛騨山脈の地下には地震波を減衰させる低速度域が存在する」という可能性が指摘されていました。

1980年代には複数の研究にて、山脈下を通る地震波が実際に大幅に減衰することが明らかになっています。
また、1990年代には山脈地下に大変重力の低い領域(超低密度域)が存在する可能性も報告されています。


地震波を減速させている立山地下の大変重力の低い領域(超低密度域)が何かは現在も特定されていませんが、一説として「水やその他の揮発性成分が大量に含まれたマグマや岩石」などではないかと考えられています。

立山を含む飛騨山脈の地下にある「何か」が地震波を小さくしており、結果として富山県が地震波から守られているというのは事実と言えそうです。

*参考論文:「重力異常から推定された飛騨山脈下超低密度域の三次元分布」 著者 源内直美 平松良浩 河野芳輝 2002年



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『地水見聞録』から市中破裂略図(富山県立図書館所蔵)

『地水見聞録』から市中破裂略図(富山県立図書館所蔵)


富山県は地震の少ない県。それでも「決して安心してはいけない」6つの理由

上記『富山県に地震が少ない理由』で解説したように、地理的・地下構造的な理由もあり近年富山県は全国の中でも地震の少ない県でした。

しかし、今後に関しては楽観視できません。
『富山県=地震の少ない県』ではなくなる可能性があるのです。

その6つの理由について解説していきたいと思います。



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理由1:富山県で想定される大地震は「内陸型地震」

富山県で想定される大地震は「内陸型地震」と言い、活断層のずれによって生じる地震です。

過去100年には県内を震源地とする内陸直下型の大地震は発生していませんが、活断層の多い(※)富山県で今後発生しない保証は全くありません。
※理由3にて解説します

県内や東に位置する石川県で内陸直下型の地震が発生した場合「地震波を減速させている立山地下の超低密度域」の地震を軽減する効果は期待できません。それどころか、緊急地震速報も間に合わず突然震度6〜7の大きな揺れに見舞われる可能性があります。

理由2:「内陸型地震」のサイクルは数千〜数万年

富山県で想定される「内陸型地震」の発生サイクルは数千〜数万年です。

数千〜数万年単位で活動する活断層のサイクルは人間の歴史と比較すると非常に長いため、有史上の地震が少ないとしても今後も同じように地震が少ないとは限りません。

「夏の間雪が降らなかったので富山県は雪の降らない県だ」と思っても冬になれば雪が降るのと同じく、長い間地震が少ない地域も活断層が動けば大地震が起きてしまいます。

「富山県は過去100年間で一番地震が少ない県だ」=「富山は地震が少ない安全な県だ」と結論づけるのは、大きな誤りなのです。

理由3:実は主要活断層が集中する富山県

日本全国には活断層がおよそ2000箇所もあると言われますが、そのうち活動度や活動した際の社会への影響度等が大きいとされているのが「主要活断層」です。

主要活断層の数は全国に114 箇所あります。

あまり認識されていませんが、日本アルプスから近畿地方にかけてはこの主要活断層が集中しており、富山県にも5箇所もの主要活断層が存在しています。

以下がその一覧です。

  1. 跡津川断層帯
  2. 牛首断層帯
  3. 庄川断層帯
  4. 砺波平野断層帯・呉羽山断層帯
  5. 魚津断層帯

そのうち特に発生確率が高いとされるのが、Sランクに分類される砺波平野断層帯東部(30年発生確率 0.04%~6%)呉羽山断層帯(30年発生確率 ほぼ0%~5%)Aランクに分類される砺波平野断層帯西部(30年発生確率 ほぼ0%~2%もしくはそれ以上)魚津断層帯(30年発生確率 0.4%以上)です。

切迫度が高いと評価されており、いつ地震が起きてもおかしくない状態と言えます。


また、警戒すべきは富山県内の活断層だけではありません。

石川県の「邑知潟断層帯(Aランク 30年発生確率2%)」「森本・富樫断層帯(Sランク 30年発生確率2〜8%)」による地震が発生した場合も、富山県では震度7またはそれに近い揺れに見舞われると予測されています

理由4:全国には未発見の活断層がたくさん存在する

では主要活断層が近くにないなど、活断層の影響を受けにくいと思われる地域については心配がないのでしょうか。

答えは「NO」です。

未発見の活断層の存在

知られていない未発見の活断層が、ある日突然に大地震を起こすケースがあります。

活断層は地形や地表に現れた断層から判断し発掘作業などの調査を行いますが、地表に現れていない活断層や断層のずれの形跡が風化した場合など、見つかっていない活断層が存在する可能性が十分にあります。
また沿岸部や火山地域、活動度の低い活断層や短い活断層についても未発見のものが存在する可能性が高くなります。

未発見の活断層が大地震を起こした例としては、2016年の「鳥取県中部地震(M6.6 震度6弱)」があります。
日本政府の地震調査委員会はこの地震について「これまでに知られていない断層が動いた」と見解を示しています。

また「2008年岩手・宮城内陸地震(M7.2 最大震度6強)」も地震発生当時には存在が確認されておらず、地震発生後に詳細な調査を行った結果、約20kmの断層が確認されました。
さらには2004年の「新潟県中越地震(M6.8 最大震度7)」も未発見の活断層によるものでした。従来知られていた活断層ではなく、厚い堆積層下の未知の断層の活動による地震と考えられています。

このように未発見の活断層による大地震は決して珍しいことではなく、近年も多くの事例が挙げられます。
居住地の近くに活断層がないと言われていても、そこで大地震が起きないとは限らないのです。

隠れた脅威となる海域の活断層

もうひとつ、地震を予測する上で隠れた脅威となるのが海域の活断層です。

実は全国の活断層のうち、「主要活断層」などに認定され長期評価が行われているのは、陸域の活断層が中心です。
活断層の調査には、航空写真などによる地形の調査や実際に地面を掘って地下構造を確認する現地調査が伴いますが、海岸沿いおよび海域の活断層はこの調査が大変困難なため、評価が不十分なままであるという現実があります。

そのため、主要活断層として注意喚起が十分にされていない、海域の活断層が大地震を起こすケースがあります。

令和6年能登半島地震がこれに該当する地震です。
能登半島地震の原因となった150kmもの長さの活断層は海域にあり、以前からその周辺では活断層の存在が指摘されていたものの主要活断層には含まれていませんでした。
石川県が作成した被害想定では「ごく局地的な災害で災害度は低い」と実際よりもかなり被害程度が低く評価されていました。

石川県と同じく海に接する富山県でも、富山湾などに存在する未調査の活断層の活動により突然の地震被害を受ける可能性がないとは言えません。

理由5:活断層の長さは評価が難しい

活断層で発生する地震は、活断層が長いほど想定される地震の規模が大きくなります。例えば長さ20km以上の場合の地震の規模は、M7.0を超えると考えられており、先に挙げた「主要活断層」の選定条件のひとつにも「活断層の長さが20km以上であること」が含まれています。

しかし、この「活断層の長さ」は評価が非常に難しいと言われています。

活断層は航空写真などにより地形から発見されたのち、現地調査やボーリング調査などにより地質を明らかにしその構造を確認します。そのため活断層の活動の形跡が地表の一部にしか表れていなかったり、侵食などにより地表から消滅することで、実際の活断層の状態よりも過小評価される可能性があります。

そのため発生した地震の規模が、当初想定されていた規模を上回る場合があります。

理由6:令和6年能登半島地震の活動が収束していない可能性がある

活断層の「割れ残り」が起こす大地震

通常大地震によって活断層の歪みは解消しますが、令和6年能登半島地震については複数の専門家が「割れ残り」の可能性を指摘しています。

「割れ残り」とは、大地震で活断層の一部の歪みが解消したものの、連続する活断層には歪みが残ったままになり、それが近い将来に再び大地震を起こすというものです。

令和6年能登半島地震では、今回原因となった能登半島北西部の断層と連続した、より富山湾に近い佐渡沖の活断層に割れ残りがあるのではと推測されています。そしてこの活断層が今回の地震により刺激を受け、今後大地震や津波を引き起こす可能性が指摘されています。


出典:北日本新聞2024年6月4日「竹内富山大名誉教授「今後も年単位で警戒を」 能登で震度5強」」https://webun.jp/articles/-/611877

出典:北日本新聞2024年6月4日「竹内富山大名誉教授「今後も年単位で警戒を」 能登で震度5強」」https://webun.jp/articles/-/611877


延長線上の活断層が動くことも

割れ残りだけでなく、規模の大きい地震の後は周辺の活断層で地震が起きやすくなると言われています。

今回の令和6年能登半島地震は大変規模の大きい地震であったため、原因となった断層帯の延長線上にある活断層への影響が懸念されています。

例えば能登半島の西側には、主要断層の中でも発生確率が高いSランクの「森本・富樫断層帯」やAランクの「邑知潟断層帯」があります。これらの活断層による地震が起きれば、富山県内では「森本・富樫断層帯」では震度6、「邑知潟断層帯」では震度7の揺れに見舞われ、大きな被害を受けると想定されています。



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結論:「富山県は近年地震の少ない県だった」が、今後も地震が少ないとは断定不可能

ここまで解説したとおり、富山県は過去100年間では全国で最も大地震の少ない県のひとつでしたが、今後も同じように『地震の少ない県であること』は難しいと言っても過言ではありません。

富山県や石川県にある主要活断層により、未来には大変な被害がもたらされることが予測されており、その時期がいつなのかはわからないのです。
また主要活断層以外にも、未発見の活断層や海域の活断層により令和6年能登半島地震のような想定外の大地震が起きる可能性があります。

「これまで地震が少ない県だった」ということによる過度の安心は禁物です。



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今後30年間、富山で大地震が発生する確率

それでは今後富山県で大地震が起きる確率はどの程度なのでしょうか。

日本政府の地震調査研究推進本部から「今後30年間に震度6弱以上の揺れに見舞われる確率」をまとめた資料が発表されています。
こちらから富山県に重点を置いて解説します。

以下の地図をご覧ください。


(出典:政府 地震調査研究推進本部「富山県の地震活動の特徴」)

(出典:政府 地震調査研究推進本部「富山県の地震活動の特徴」)


地図が示すのは、「今後30年間で震度6弱以上の地震に見舞われる確率」です。
色が濃いほど確率の高いとされている地域です。

砺波市、南砺市、小矢部市、高岡市、射水市、氷見市、富山市など県内の広い範囲が「6~26%」とかなり高い確率に分類されています。
特に人口の多い富山市や高岡市の中心部が含まれているのも気になる点です。

都市部で大地震が起きた際には二次災害(火災など)も懸念されます。

「今後30年以内に6%〜26%」という確率をどう捉えるか

震度6以上の地震が発生する確率「6%〜26%」は、低い確率のような印象がありますが、実際にはいち早く地震に備えるべき『油断できない数値』です。

この数字を理解するために、他の災害などと比較してみましょう。

例えば、火災で被災する確率は1.9%です。
火災の1.9%と比較すると、6%は3倍以上の確率です。

また、交通事故で負傷する可能性は24%です。
交通事故の24%と比較すると、26%は交通事故と同程度でかなり高い確率と言えます。

かなり多くの方が、火災や交通事故での被災は身近なもの・起こり得るものとして、保険に加入するなどの備えをされています。

火災や交通事故の確率と比較すると、富山県が30年以内に震度6以上の大地震に被災する可能性(6%〜26%)もそれらと同じくらい高く、十分に備えておくべきものと言えます。



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【想定被害】富山県直下での内陸型地震が発生した場合の想定被害について

富山県周辺には大きな地震を起こす可能性の高い活断層が多く存在していますが、そのうち今後30年間の地震発生確率が高く、規模も大きい4つの活断層帯について、想定されている揺れや被害の内容を見ていきたいと思います。


公益財団法人とやま国際センター「防災情報inとやま」富山県の活断層

公益財団法人とやま国際センター「防災情報inとやま」富山県の活断層



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ケース1:砺波平野断層帯による地震

砺波平野断層帯は、
・砺波平野断層帯西部(砺波平野北西縁の富山県高岡市から南砺市に至る)
・砺波平野断層帯東部(砺波平野南東縁の富山県砺波市から南砺市に至る)
の2つから構成されています。

砺波平野断層帯西部では、小矢部市や高岡市の一部で震度7以上の揺れ

砺波平野断層帯西部の長さは26km、想定される地震の規模はM7.2とされています。

想定震度は、小矢部市、高岡市、砺波市、南砺市、射水市、氷見市などの比較的広範囲で震度6弱以上、小矢部市や高岡市の一部では震度7が予測されています。

今後30年以内の発生確率はAランク(ほぼ0%~2%もしくはそれ以上)です。

建物の全半壊は5万7千棟

富山県は平成29年に砺波平野断層帯西部による地震の被害予想を発表し、それによると全壊および半壊する建物は5万7千棟、死者431人、負傷者5795人と予測しています。

(参考:富山県「地震被害想定調査の結果の概要について」)


富山県「地震被害想定調査の結果の概要について」

富山県「地震被害想定調査の結果の概要について」


砺波平野断層帯東部では、富山市を含む県内広範囲で震度6弱以上

砺波平野東部断層帯の活動周期は3千−7千年程度ですが、前回の地震は約4千3百年前〜約3千6百年前に起きています。
少なく見積もっても前回の地震から3千6百年が経過しており、次の地震がいつ起きてもおかしくないという活断層で、今後30年以内の発生確率はSランク(0.04%~6%)です。

砺波平野東部断層帯の長さは21kmで、想定される地震の規模はM7.0とされています。

想定震度は、富山市、高岡市、射水市、小矢部市、砺波市、南砺市など県内の広範囲にわたって震度6弱以上が予測されています。

発生確率はSランク、しかし被害想定は未調査

砺波平野断層帯東部は30年以内の地震発生確率が3%以上のSランクに属する活断層ですが、被害想定調査は行われていません。

砺波市は2024年7月に、県に対して地震調査研究推進本部による地域評価や重点的調査観測の早期実施を国などに働きかけることと、国などの調査が進まない場合は県独自で調査し、早期に被害想定調査を実施して公表することなどを要望しています。


出典:政府地震調査研究推進本部「砺波平野断層帯東部」

出典:政府地震調査研究推進本部「砺波平野断層帯東部」


ケース2:呉羽山断層帯による地震

呉羽山断層帯は富山平野西縁の富山市から富山湾まで達する断層帯です。

呉羽山断層帯では、魚津市から氷見市にかけて広範囲で震度6弱以上の揺れ

呉羽山断層帯の長さは22km以上、想定される地震の規模はM7.2とされています。

想定震度は、富山市、射水市、高岡市、砺波市、南砺市、小矢部市、氷見市、滑川市、上市町、船橋村などの広範囲で震度6弱以上、射水市の大部分や高岡市、富山市、氷見市の一部では震度7が予測されています。

今後30年以内の発生確率はSランク(ほぼ0%~5%)です。

建物の全半壊は36万棟、死者は4千人超

富山県は平成23年に呉羽山断層帯による地震について被害予測を見直し、建物の全壊および半壊は36万棟、死者は4千人を超えるとの非常に大きな被害予測を発表しました。

(参考:富山県「呉羽山断層帯被害想定調査の調査結果の概要について」)


呉羽山断層帯想定震度分布(富山県「呉羽山断層帯被害想定調査の調査結果の概要について」)

呉羽山断層帯想定震度分布(富山県「呉羽山断層帯被害想定調査の調査結果の概要について」)


ケース3:森本・富樫断層帯(石川県)による地震

森本・富樫(もりもと・とがし)断層帯は、金沢平野の南東縁に発達する活断層帯です。

森本・富樫断層帯では、小矢部市から富山市にかけて広範囲で震度6以上の揺れ

森本・富樫断層帯の長さは26km以上、想定される地震の規模はM7.2とされています。

想定震度は、県内では小矢部市、南砺市、砺波市、氷見市、高岡市、射水市、富山市などで震度6以上が予測されています

今後30年以内の発生確率はSランク(2%~8%)です。

建物の全半壊は2万5千棟

富山県は平成29年に森本・冨樫断層帯による地震の被害予想を発表し、それによると全壊および半壊する建物は2万5千棟、死者65人、負傷者2,104人と予測しています。

(参考:富山県「地震被害想定調査の結果の概要について」)


森本・冨樫断層帯の地震(富山県「地震被害想定調査の結果の概要について」)

森本・冨樫断層帯の地震(富山県「地震被害想定調査の結果の概要について」)


ケース4:邑知潟断層帯(石川県)による地震

邑知潟(おうちがた)断層帯は、石川県の中部に分布する活断層帯です。

邑知潟断層帯では、氷見市、高岡市、小矢部市の大部分で震度7以上の揺れ

邑知潟断層帯の長さは44kmと非常に長く、想定される地震の規模はM7.6とされています。

想定震度は、県内では氷見市、高岡市、小矢部市の大部分などで震度7以上、砺波市、南砺市、富山市などでは震度6以上が予測されています。

今後30年以内の発生確率はAランク(2%)です。

建物の全半壊は17万棟、死者は3万5千人超

富山県は平成29年に邑知潟断層帯による地震の被害予想を発表し、それによると全壊および半壊する建物は17万棟、死者3,557人、負傷者19,590人と予測しています。

(参考:富山県「地震被害想定調査の結果の概要について」)


邑知潟断層帯ケース 4 の地震(富山県「地震被害想定調査の結果の概要について」)

邑知潟断層帯ケース 4 の地震(富山県「地震被害想定調査の結果の概要について」)


想定被害まとめ:決して楽観視できない深刻な被害想定



活断層帯 想定地震規模 被害想定(予測)
砺波平野断層帯西部 M7.2
小矢部市、高岡市、砺波市、南砺市、射水市、氷見市などで震度6弱以上
小矢部市や高岡市の一部では震度7
全壊および半壊する建物は5万7千棟
死者431人
負傷者5795人
砺波平野断層帯東部 M7.0
富山市、高岡市、射水市、小矢部市、砺波市、南砺市などで震度6弱以上
未調査
呉羽山断層帯 M7.2
富山市、射水市、高岡市、砺波市、南砺市、小矢部市、氷見市、滑川市、上市町、船橋村などで震度6弱以上
射水市の大部分や高岡市、富山市、氷見市の一部では震度7
建物の全壊および半壊は36万棟
死者は4千人を超える可能性
森本・富樫断層帯(石川県) M7.2
(富山県内のみ記載)
小矢部市、南砺市、砺波市、氷見市、高岡市、射水市、富山市などで震度6以上
全壊および半壊する建物は2万5千棟
死者65人
負傷者2,104人
邑知潟断層帯(石川県) M7.6
(富山県内のみ記載)
氷見市、高岡市、小矢部市の大部分などで震度7以上砺波市、南砺市、富山市などで震度6以上
全壊および半壊する建物は17万棟
死者3,557人
負傷者19,590人

富山県や石川県には地震発生確率の高い主要活断層が4つあり、それぞれの地震による被害はこれまでに経験したことがないような深刻なものが想定されています。

人的被害や建物被害の数字の大きさに、予想以上だと驚かれた方も多いのではないでしょうか。

このような地震が具体的にいつ起きるのかは不明です。
しかし、いつか起こりうるものとして国や自治体が試算し公表していますので、自分の住む地域に関連する情報は知っておく必要があります。



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これから富山県で起きる大地震で命を守るには

今後の富山県における大地震の被害想定では、あまりに多くの人命が失われることが予測されており地震の怖さを改めて感じました。

この想定死者数の内訳について注目してみると、その多くが建物の倒壊などによる死者数です。

そのことがよくわかる資料があります。
「建物の耐震化による人的被害の軽減効果の予測」について書かれた下の表をご覧ください。


富山県「地震被害想定調査の結果の概要について」

富山県「地震被害想定調査の結果の概要について」


富山県が「地震被害想定調査の結果の概要について」で公表した内容によると、県内の住宅耐震化率が将来90%まで向上した場合、地震の想定死者数は30~50%まで大幅に減少するとされています。

つまり、住宅の耐震性を高めることで人的被害は大幅に軽減することができます

建物の耐震化は、命を守るために非常に優先度が高い地震対策となります。



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まとめ

「地震の少ない県」と言われてきた富山県は令和6年能登半島地震で大きな被害を受けました。
近年富山県が地震が少ない県であったのは、海溝型地震の影響を受けにくい地理的理由や、立山を含む飛騨山脈の地下にある地震波の減衰領域に守られているなど地下構造的な理由がありました。

しかし、さまざまなデータが示すとおり未来には大きな地震の発生が予測されています。
今後30年以内に震度6弱以上の地震に見舞われる確率は6〜26%と高く、火災や交通事故と同じように「高い確率で自分の身に起こり得ること」ととらえ、もしもの時への備えをすることが重要です。

将来の大地震では過去に経験しなかったような多くの死者数が予測されており、未知の地震の恐ろしさを感じざるを得ません。
しかし、大地震による人的被害は「建物の耐震化」「家具の固定など家の中の安全対策」「避難場所や避難経路の確認」「非常備蓄品などの準備」などの事前対策によって軽減させることができます。なかでも住宅の耐震性を高めることは非常に重要かつ効果的です。

地震から命を守るため、日頃から自分が住む地域の活断層や想定被害、そして避難場所などの防災情報を確認しておきましょう。


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