木造住宅耐震改修研究所コラム


当研究所は、富山県の建物の耐震改修を専門に手がけています。
今回のコラムでは、耐震改修という観点からみた「富山県の住宅の特徴」について解説したいと思います。


(1)住宅の床面積が大きい

統計によると、富山県の住宅の一戸あたりの延床面積は 152.18㎡ と全国1位になっています。
これは、全国平均が 108㎡ であることから比較すると、相当な広さであると言えます。
(参考:国土交通省 平成30年度住宅経済関連データ)

なぜ富山県の家は大きいのでしょうか?

富山県は昔から米の収穫量が多く、豊かな家が多かったと言われています。
現在も勤労者世帯の実収入は全国9位と、全国的にも見ても高水準です。
(参考:政府統計 統計でみる都道府県のすがた2019)

収入の背景には共働き率、三世代同居率の高さがあるのです。
つまり一つの家で家族が支え合って生活している家庭が多く、大家族での生活に合わせて家の面積が広くなっていると言えます。
また、県西部の散居村では田んぼの中に家と家が離れて建っているという特徴的な集落形成をしたため、住宅が密集した地域に比べて大きい家を建てることができたという側面もあります。

耐震改修の観点では?

しかし、耐震改修の観点からすると、床面積が大きいということはそれを支えるための壁も多く必要になるので、改修の費用は一般的に高額になっていきます。

財団法人日本建築防災協会が作成した「木造住宅の耐震改修の費用」という資料のなかで、耐震改修工事の概算式は、
耐震改修費用=単位費用×評点×延床面積
とされています。
(参考 財団法人日本建築防災協会「木造住宅の耐震改修の費用」)

建物の状況など一概には言えない面もありますが、一般的には耐震改修費用は延床面積に比例して高くなります。




・・・・・


(2)住宅の壁が少なく、バランスが悪い

富山県の伝統的な建築としては、砺波平野の散居村でよく見られる様なアズマダチの住宅があります。

大きな切妻形式の瓦屋根、風雨や積雪に耐えられるよう太い柱や梁で作られたアズマダチ住宅は、当然その重量も重くなります。
一般住宅も、富山県では積雪のため柱の直径は通常(10.5cm)より太いもの(12cm)が主に採用されており、屋根も重量のある黒瓦が使用されていることが多いため、重量が重くなる傾向があります。

実は耐震改修の観点からすると、この「住宅の重量」がポイントになってきます。
耐震計算をする上では、住宅の重量に対してどれだけの壁が必要か、ということを考えます。
つまり、重量が重いほど、耐震改修に必要な壁の面積なども大きくなるということです。

ところが、富山県の住宅には耐震性と逆の方向をいく、ある間取りの特徴があります。
それは、障子のみで仕切られた部屋が多いということです。
合わせて、東面に廊下、座敷、玄関、勝手口とつながった東全面に開口部があり、壁量のバランスが悪い建物があります。

一般的な住宅が、壁やドアで仕切られているのに対して、富山県の住宅では障子のみで仕切られている場合が多くあります。
これは、障子を取り外すことで大きな一間として利用できるため、冠婚葬祭や親戚が一堂に集まれる場として利用してきたということが理由です。
また仏教の信仰に厚く、どの家庭にも2間続きの座敷に仏間があり、葬式や法事は家で行う、というのが少し前までは富山県での一般的な慣習でした。

しかしながら耐震計算上は、「住宅の重量に対して十分な壁がある」ということが必要になってくるため、こうした構造の住宅は耐震性が十分でない可能性が高いということになります。



・・・・・


(3)積雪時の耐力を見込む必要がある

富山県は積雪地帯です。
積雪時には、雪の重みが地震発生時に建物に加わる力となります。
そのため、耐震診断時は、積雪のない状態と積雪1mの時の2種類作成し、上部評価点の悪い方を評点とします。

積雪が1mの時の積雪荷重は0.26kN/㎡見ておりますので、耐震設計時にはかなりの壁耐力が必要となります。

(4) 金属外壁の家が多い

3つ目の特徴は、「金属外壁の家が多い」ということです。

富山県の冬は、寒さが大変厳しく雪も多く降ります。

外壁の素材の中には、こうした積雪や寒冷に弱く、寿命が短くなってしまうものがあります。
それは、水分を吸収しやすい外壁材です。

外壁材が水分を吸収した状態で凍ると、水から氷になることで体積が膨張し、外壁材のひびや割れの原因になります。
モルタルなどの素材では細かなひび割れの発生により水分が入り込んだり、窯業系サイディングも塗装で吸収を防いではいますが、水分の侵入を完全に防ぐことは難しい素材です。
これらと比較すると、金属外壁は水分を吸収しないため雪による劣化に強く、富山県の住宅では非常に多く使用されています。

耐震性の低い金属外壁

金属外壁は冬の気候への対策としては有効でした。

しかしながら耐震性は非常に低く、巨大地震が起こった場合には住宅を支える強度はほとんどありません。
そのため、耐震の面では対策が必要なポイントの一つになります。


◆耐震改修はやりやすい

耐震性は低いものの、実際に耐震改修を行う際には外壁が金属であることはメリットがあります。

それは、取り外しがしやすく、再度の取り付けが容易である、という点です。

耐震改修工事では、外壁を外して筋交いや耐力合板を入れる施工を行うため、金属外壁の場合その手間とコストを抑えることができます。耐震改修後に、再度元の外壁を取り付ける場合や新しい外壁でリフォームする場合もありますが、金属外壁ではそれらが比較的容易にできると言えます。


富山県で多く使用されている金属外壁

富山県で多く使用されている金属外壁



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


以上、今回は耐震改修の観点から見た富山県の住宅の特徴についてご紹介いたしました。

当研究所は、富山県の住宅の耐震改修を専門に行っているため、県内の住宅事情について熟知しています。
富山県の住宅事情に合わせた設計や工法について、高い専門性を持って提案し、お客様のニーズを満たせることが強みです。

耐震改修についてご検討の方は、どうぞお気軽にお問い合わせください。


耐震診断・改修のお問い合わせ
研究所コラム一覧