木造住宅耐震改修研究所コラム

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2024年1月1日に発生した令和6年能登半島地震は石川県能登地方を中心に大きな被害をもたらしました。
この地震の震源地は石川県珠洲市付近で、規模はM7.6と推定されています。

この記事では、能登半島地震が被災地全体にもたらした被害状況についてさまざまなデータをもとに詳しくまとめました。
なかでも富山県内の被害に重きを置いて解説しています。



能登半島地震で富山県は最大震度5強という強い揺れに見舞われ大変な被害を受けましたが、今後さらに大きな地震が起きる可能性も否定できません。

今後、大きな地震が起きた場合に
・今回の地震から学んだことは何か

・学んだことを踏まえて、大地震から命を守るためにすべきことは何か
という点が重要になります。
令和6年能登半島地震の被害状況を把握し、これからの防災に活かしていきましょう。




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令和6年能登半島地震の概要

地震の規模と震源地

令和6年1月1日16時10分に、石川県能登地方でマグニチュード7.6・最大震度7を記録した大地震「令和6年能登半島地震」が発生しました。活断層を震源とする地震としては日本観測史上最大の地震となりました。

能登半島西方沖から佐渡島西方沖にかけて伸びる活断層を震源としており、動いた活断層の長さは150kmにも及ぶと言われます。

全国の震度

この地震での震度は、石川県輪島市、志賀町で震度7を観測したほか、能登地方の広い範囲で震度6強や6弱の揺れを観測しました。
また北海道から九州地方にかけての非常に広い範囲で震度6強~1を観測しています。

M7.6の地震の前後にも規模の大きな地震が発生したため、強い揺れが長く続きました。


出典:気象庁「震度データベース検索」

出典:気象庁「震度データベース検索」


富山県内の震度

富山県内の各市町村では震度5強〜4の揺れを観測しました。

富山県においては観測史上初である震度5強を、富山市、高岡市、氷見市、小矢部市、南砺市、射水市、舟橋村の6市1村で観測しており、多くの県民にとってはこれまでに経験したことのない揺れとなりました。


出典:気象庁「震度データベース検索」

出典:気象庁「震度データベース検索」


富山県内観測点における震度

富山県内の観測点における各地の震度は以下の通りです。



震度 観測点名
5強 富山市新桜町、高岡市伏木、氷見市加納、
小矢部市泉町・水牧、南砺市蛇喰、
射水市久々湊・小島・本町・橋下条・二口・加茂中部、
舟橋村仏生寺
5弱 富山市石坂・八尾町福島・婦中町笹倉、
高岡市広小路・福岡町、滑川市寺家町、
黒部市植木、砺波市栄町・庄川町、
南砺市天池・荒木・城端・下梨・上平細島・井波・苗島、
上市町稗田、立山町吉峰・芦峅寺、朝日町道下
4 富山市今泉・花崎・上二杉・山田湯・楡原、
魚津市釈迦堂・本江、黒部市宇奈月町下立、
立山町米沢、入善町入膳、富山朝日町境、南砺市利賀村上百瀬


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地殻変動

観測史上最大規模の海岸隆起

令和6年能登半島地震の大きな特徴のひとつは、大規模な海岸隆起現象が発生したことです。

海岸の隆起は、陸に近い海域を震源とする地震により引き起こされます。

国土地理院によると、能登半島地震では沿岸部の海底がおよそ90km(珠洲市〜輪島市〜志賀町)にもわたって隆起しており、その高さは石川県輪島市西部では最大でおよそ4mであったことが分かっています。
4mもの海岸隆起は観測史上最大規模となります。


鹿磯漁港の防潮堤に固着した生物遺骸が示す隆起の様子(出典:産総研地質調査総合センター「第四報 2024年能登半島地震の緊急調査報告(海岸の隆起調査)」)

鹿磯漁港の防潮堤に固着した生物遺骸が示す隆起の様子(出典:産総研地質調査総合センター「第四報 2024年能登半島地震の緊急調査報告(海岸の隆起調査)」)


能登半島の地層には過去にも地震による海岸隆起を繰り返してきた形跡があります。

そもそも能登半島は、地球の歴史の中で地震のたびに少しずつ隆起してできた半島であるとも言えます。

今回の地震では、海岸の隆起により能登半島の沿岸部の広い範囲で海であった場所が陸化しました。
下の地図の赤い部分は陸化した地域ですが、珠洲市から志賀町までかなりの距離の海岸で陸化が発生したことがわかります。


沿岸域の陸化域(出典:国土地理院)

沿岸域の陸化域(出典:国土地理院)


海岸隆起による漁港の被害

海岸の隆起により、能登半島西岸部の多くの漁港では水深が浅くなったり海底が露出するなど船を出すことができなくなり、機能不全の状態になりました。

石川県によると、23の港湾(漁港22、港湾1)で隆起の被害が確認されています。
漁港・港湾は震災時には物流の拠点となることもあり、復興を目指す被災地にとって多くの漁港・港湾が機能不全になったことは痛手でした。

また、海岸の隆起により水産物の生態系に影響があり漁獲量が減少するなどの報告もあり、石川県の主要産業のひとつである水産業に大きなダメージを与えました。

富山県における海岸隆起

富山県においては能登半島地震により海岸が隆起したという報告はされていません。

これは、能登半島地震での海岸隆起は上の地図が示すとおり能登半島の北西の海岸が海側にせり出す形で発生したためで、富山県の沿岸部を含む能登半島の南東側では隆起は観測されませんでした。

しかしながら海に面している富山県では、今後新たに富山県周辺の沿岸部を震源とする大きな地震が発生した場合には、今回のように海岸隆起が発生する可能性があります。その場合、漁港・港湾が機能不全になるなどの水産業への影響も懸念されます。



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津波

広範囲で発生した津波と津波による浸水被害

能登半島地震では沿岸部の各地に津波が到達しました。

この地震での津波の大きな特徴は、津波の第一波の到達が非常に早かった、ということ
です。
これは、陸地に近い海域を震源とする地震であったことが理由です。

石川県珠洲市や輪島市では1分、石川県七尾市には約2分後に第一波が到達しています。


さらに能登半島では広範囲で津波による浸水も発生しました。
下の地図の青い部分が、津波による浸水があった地域です。

最も広く浸水した地域である珠洲市鵜飼漁港周辺では、津波の遡上高は3メートルを超え、沿岸の建物は2.5m以上浸水しました(※)。
※ 東北大学災害研 越村俊一教授の調査による

また、最大で海岸から内陸約500mまで浸水があったことが空中写真判読から推定されています。


地図上の青色部分が津波で浸水した区域(出典:国土地理院)

地図上の青色部分が津波で浸水した区域(出典:国土地理院)


東大地震研究所などの調査によると、石川県の志賀町赤崎では津波が高さ4.2mまで遡上したと報告されています。

これらの津波により能登半島沿岸部では建物や港湾が大きな被害を受けました。


石川県志賀町 赤崎漁港の倉庫外壁に残された津波痕跡(出典:東京大学地震研究所「研究速報 令和6年能登半島地震」)

石川県志賀町 赤崎漁港の倉庫外壁に残された津波痕跡(出典:東京大学地震研究所「研究速報 令和6年能登半島地震」)


石川県能登町の津波被害の様子(出典:石川県「もっといしかわ」)

石川県能登町の津波被害の様子(出典:石川県「もっといしかわ」)


富山県内の津波被害

地震発生3分後に到達した津波

富山県でも地震発生後に津波警報が発令され、その後沿岸部で津波が観測されています。

富山市や高岡市では震源から比較的距離があるのにもかかわらず、地震発生から富山市は3分後、高岡市では2分後と短時間で津波の第一波が到達しました。
石川県の七尾港には地震発生から37分後に到達しているのと比較すると、富山湾沿岸部には局地的に早く津波が到達していることがわかります。

後日海上保安庁が海中の調査を行ったところ、富山湾の沖合にある斜面の一部が崩壊していることが明らかになりました。この崩壊が富山湾沿岸の各地に局地的な津波を発生させた可能性が高いとされています。

今後発生する地震においても、「津波は海底地すべりによっても引き起こされる」ことを念頭に、震源地から距離がある場合でも速やかに海岸付近から避難することが重要です。

氷見市沿岸部では最大2mの津波

富山県沿岸部に到達した津波の高さについて見ていきましょう。


富山市の検潮所では80cmの津波が観測されています。
また気象庁の現地調査の結果、富山県射水市海竜新町で確認された津波の遡上高は1.5mでした。

富山県立大学の呉 修一准教授と東北大学 災害科学国際研究所のサッパシー・アナワット准教授が行った現地調査によると、氷見市沿岸部で最大2m超の遡上高が観測されています。


出典:気象庁「検潮所における津波の高さと浸水深、浸水高、遡上高の関係」」

出典:気象庁「検潮所における津波の高さと浸水深、浸水高、遡上高の関係」」


史上初の津波警報により生じた大混乱

今回、能登半島地震によって富山県に津波警報が発令されました。

富山県に津波警報が発令されたのは、1993年の「北海道南西沖地震」以来31年ぶりです。
海岸近くからは多くの人が高台を目指して避難を行い、少なからず混乱が生じたことが報道されています。

NHKが行ったアンケート結果によると、避難した人の半数以上が車を利用しており、「渋滞した」「液状化や道路の隆起で車が通れなかった」などの声が聞かれました。(参考:NHK 2024年2月2日 津波警報で海沿いから避難 半数以上が“車を使った” 富山県)

また読売新聞によると、魚津市では日頃の防災訓練でも津波避難は徒歩での移動を周知してきたにもかかわらず、地震発生後の混乱により防災無線などの呼びかけが間に合わなかったことなどから車で避難する市民が多くなり、至るところで大渋滞が発生したとの報道があります。(参考:読売新聞2月2日「津波警報避難で大渋滞 「原則徒歩」周知間に合わず」吉武幸一郎)

その他にも、
・津波警報に驚き浸水しない地域の住民も避難することで避難所が混乱した
・できるだけ遠くに逃げようと居住市外の避難所に人が詰めかけた

など、県内では久しぶりの津波警報によりさまざまな混乱が起き、津波避難について課題が多いことが判明しています。


東日本大震災では、渋滞中の車が津波にのまれて多数の犠牲者が出ています。
この反省を踏まえて多くの自治体では「原則徒歩」での避難を防災計画に記載しています。富山県内の自治体も津波避難では徒歩が原則としていますが、高齢者や障害者などがいるなど車で避難せざるを得ない場合は例外とされています。

今回の津波避難で生じた混乱から、改めて津波からの避難経路や避難の交通手段を再検討しておくことが重要だと言えます。


気象庁 津波警報 1月1日16時22分発表

気象庁 津波警報 1月1日16時22分発表



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液状化現象

大規模な液状化が発生した能登半島地震

国立研究法人防災科学技術研究所の調査によると、能登半島地震では能登半島地震では4県(石川県、富山県、福井県、新潟県)34市町村もの広範囲において液状化現象が発生したことがわかっています。

液状化とは、砂の地盤に地震などの強い揺れが加わることにより砂の粒子が地下水に浮いた状態となり、地盤がどろどろの液体状になる現象のことを言います。

液状化が起きると、地面から水や砂が吹き上がる「噴砂現象」が起こります。
また、地盤が建物を支える力も失われ、比重の大きいビルや橋梁は沈下し、比重の小さい地下埋設管やマンホールなどは浮力で浮き上がることがあります。


液状化が発生した市町村(国立研究開発法人防災科学技術研究所「令和6年能登半島地震 液状化被害の分布と特徴」先名重樹 氏著)

液状化が発生した市町村(国立研究開発法人防災科学技術研究所「令和6年能登半島地震 液状化被害の分布と特徴」先名重樹 氏著)


液状化現象とは(出典:国土交通省)

液状化現象とは(出典:国土交通省)


液状化により建物や道路、上下水道等のインフラへの被害が大きくなるほか、宅地の傾斜や沈下が多く発生しました。

液状化した地点の数を過去の大地震と比較すると、能登半島地震の2114カ所は東北地方太平洋沖地震での8680カ所には及ばないものの、熊本地震の1890カ所や阪神・淡路大震災の1266カ所を上回ります。


それでは、なぜ能登半島地震ではこれほど多くの液状化被害が発生したのでしょうか。
液状化被害のいくつかの理由を見ていきましょう。


石川県内灘町の液状化被害の様子(出典:石川県「もっといしかわ」)

石川県内灘町の液状化被害の様子(出典:石川県「もっといしかわ」)


液状化被害が多かった理由その1・砂丘や埋立地などの砂地盤

液状化しやすい地盤の条件とは、

・地層が水を多く含んでいる(水位が高い)
・ゆるく堆積した砂地盤

の2つがあげられます。

日本海沿岸部は北西からの季節風により砂が浜に打ち上げられ、砂丘が形成されやすい環境にあります。
能登半島地震による液状化現象は、地形的に「砂丘」に分類される地域で多く発生していました。

また海や川の近くでは一般的に水位が高く地層に水を多く含みます。

能登半島地震では石川県、富山県、新潟県、福井県など日本海に面した県が強く揺れましたが、日本海沿岸部では砂丘や埋立地などの液状化しやすい条件を満たした地域が多く存在していたため液状化被害が深刻になったと考えられます。

液状化被害が多かった理由その2・長時間続いた強い揺れ

もうひとつの理由とは、地震の揺れが長く続いたことです。

防災科学技術研究所の調査によると、能登半島地震で液状化した2114の地点のうち、震度が5弱以下の地点の割合は16%であったことが判明しました。東日本大震災では4%、熊本地震では1%であったことと比べると、能登半島地震では震度5弱以下の地域でも液状化が著しく多く発生していることがわかります。

液状化を引き起こすのは地震による強い揺れですが、この強い揺れが長く継続するとより液状化現象が起きやすくなります。

熊本地震では、液状化を発⽣させる強い揺れの継続時間が10秒程度であったのに対し、能登半島地震は40秒程度と強い揺れが大変⻑く続きました。このことが、震度5弱以下の地域でも液状化を多く引き起こしたのではないかと考えられています。

富山県内における液状化被害

富山県内でも沿岸部を中心とした各地で液状化現象が起きており、土地の傾斜や沈下によって港湾、建物や道路などが大きな被害を受けました。
被害が報告されている市町村は、氷見市、高岡市、射水市、富山市、滑川市、魚津市です。

液状化の被害が深刻であった地区のうち、いくつかの地区についての被害状況や地形などについて見ていきましょう。

高岡市伏木地区

高岡市伏木では広範囲で地盤の液状化が発生し、噴砂や沈下により宅地が傾く被害が発生しました。

伏木地区の自治会連絡協議会の調査では、約120世帯が転居し、被害が大きかった石坂地区と中道地区は半数近くが転出したといいます。(出典:2024年12月24日KNB「【2024とやま】被災地伏木 住民のつながりを守る 高岡市」)


液状化被害の大きかった高岡市伏木※地図中央(国土地理院地図)

液状化被害の大きかった高岡市伏木※地図中央(国土地理院地図)


伏木地区は日本海と小矢部川河口に挟まれる位置にあります。
土地の成り立ちを調べてみると、海岸沿いのエリア(地図のクリーム色部分)は砂州・砂丘に該当しており、波によって打ち上げられた砂や礫、風によって運ばれた砂が堆積した地盤からなります。
また、伏木地区の中でも特に被害の大きかった伏木地区中心部は、江戸時代に低湿地を新開してできた土地であり、地下水位が高かったことが推測されます。

地盤が砂であることと海と河川に挟まれた環境、さらには低湿地を埋め立てたという土地の履歴などの条件が重なり、液状化しやすい状況にあった可能性があります。

高岡市吉久地区

高岡市吉久地区は、小矢部川の河口を挟んで伏木地区の対岸にあり、伏木地区同様に液状化被害が多く発生しました。


液状化被害の大きかった高岡市吉久地区※地図中央(国土地理院地図)

液状化被害の大きかった高岡市吉久地区※地図中央(国土地理院地図)


吉久地区は、加賀藩の年貢米を収納する『御蔵』として江戸時代から栄えた町であり、古い町並みが残る一部のエリアは重要伝統的建造物群保存地区に選定されています。

地理的には小矢部川と庄川に挟まれた河口に位置し、土地の成り立ちを調べると「氾濫平野」に該当します。
氾濫平野とは、洪水で運ばれた砂や泥などが河川周辺に堆積したり過去の海底が干上がったりしてできる、起伏が小さく、低くて平坦な土地を言います。

その土地の成り立ちから吉久地区の地盤には砂が多く堆積しており、また大きな河川に挟まれた低位の土地であることから地下の水位が高かったことが推測されます。

高岡市の調査によると、吉久地区の中でも小矢部川沿いの土地に液状化被害が集中しており、重要伝統的建造物群保存地区を含む庄川沿いのエリアでは被害が比較的軽微であったことがわかっています。

高岡市横田地区

高岡市横田地区は、伏木や吉久とは異なり海から離れた高岡市中心部に位置していますが、宅地が傾くなど深刻な液状化被害がありました。


液状化被害の大きかった高岡市横田町※赤丸付近(国土地理院地図)

液状化被害の大きかった高岡市横田町※赤丸付近(国土地理院地図)


高岡市の調査によると、横田地区は1990年代後半に宅地造成によって水田を埋め立てた、新しい住宅地でした。
また地形図で土地の成り立ちを見ると氾濫平野もしくは旧河道に該当し、隣接する千保川から運ばれる土砂が堆積した地盤であることが推測されます。

これらのことから、横田地区は地盤に砂が多く堆積し地下の水位が高い土地であった可能性があります。

氷見市北大町・栄町

氷見市では広い範囲で液状化の被害が発生しましたが、特に海岸付近の北大町や栄町、比美町などでの被害が大きくなりました。


液状化被害の大きかった氷見市栄町・北大町(国土地理院地図)

液状化被害の大きかった氷見市栄町・北大町(国土地理院地図)


この地域の土地の成り立ちを見ると広範囲が砂丘か埋立地に該当しています。
日本海沿岸部は日本海から吹き付ける季節風によって砂が堆積し砂丘が形成されやすく、その砂地盤は液状化が起こりやすいと言われています。

また、海に隣接し上庄川、余川川、仏生寺川など河川の河口も集中しているなど水を多く含んだ(水位の高い)土地であることが推測できます。

氷見市「ひみ番屋街」「総湯」エリア


液状化被害の大きかった「ひみ番屋街」「総湯」エリア

液状化被害の大きかった「ひみ番屋街」「総湯」エリア


氷見市北大町に位置する「ひみ番屋街」「総湯」は、平成18年(2006年)に完了した埋立地に建築された氷見市の観光拠点である施設です。

能登半島地震後は液状化により駐車場に砂が噴き出し亀裂や陥没が発生しました。また水道管が破損して長期間断水するなどの被害もあり長期間営業停止となり、氷見市の観光業にも大きなダメージとなりました。

ひみ番屋街は被害の大きかった北大町にあり、さらには新しい埋立地であったため特に液状化しやすい条件が揃っていました。

富山市東蓮町地区

富山市北部の運河沿いに位置する東蓮町地区では240戸のうち少なくとも70戸以上もの住宅に液状化被害がありました。
噴砂や宅地の沈下により家が傾くなど深刻な被害が多く発生しました。


液状化被害の大きかった富山市東蓮町地区

液状化被害の大きかった富山市東蓮町地区


人工的な土地の成り立ちを調べてみると、東蓮町を含めたこの一帯は「盛土地・埋立地」に該当します。
「盛土地・埋立地」とは、周囲の地表より高く盛土した土地や、水部に土砂を投入して陸地にしたり、谷のような凹地を埋め立てて造成した土地を言います。

今回の液状化は、東蓮町の中でも地図中の赤枠にあたるエリアに集中していました。
このエリアはちょうど「旧河道」に該当しており、また運河沿いでもあることから地盤に砂が堆積しており地中の水位が高かった可能性があります。

液状化被害が大きかった地区の共通点

高岡市によると、被害が大きかった3地区で実施した地盤調査の結果、いずれの地区も、地下水位が高く、地表面近くに緩い砂の層が確認されています。この地下水で満たされた緩い砂の層に地震の力が加わり、液状化現象が起きたと考えられています。

氷見市など他の被害地区の土地の成り立ちについても、海岸や河川付近、旧河道付近など、砂が多く堆積し水を多く含んだ地盤である点が共通しています。

能登半島地震では海岸に近い地域で液状化被害が多く見られますが、高岡市横田地区のように海岸から離れた地域でも条件が揃うことで液状化が発生しています。

住んでいる場所の土地の成り立ちや液状化のしやすいさについては以下のリンク先などで調べることができますので、ぜひ調べてみることをおすすめします。

▶︎国土地理院「重ねるハザードマップ」

災害の危険度や地形分類、土地の成り立ちを調べることができるマップ
リンク

▶︎北陸地方整備局「液状化しやすさマップ」

北陸全体の液状化しやすさを調べることができるマップ
リンク



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住宅被害

能登半島地震による住宅被害数(県別)

能登半島地震では15万棟近くの住宅が被害を受け、そのうち全半壊した住宅は3万棟にもなりました。
多くの方が自宅に住み続けることができなくなり、避難所などでの生活を余儀なくされました。

以下の表は、能登半島地震での住宅被害数を、県別・損傷の程度によって集計したものです。



全壊  半壊 一部破損 浸水 合計
新潟県 109 4,080 19,861 14 24,064
富山県 259 805  21,341 22,405
石川県 6,077 18,328 77,990  11 102,406
福井県  12 815 827
長野県 20 20
岐阜県 2 2
合計 6,445  23,225 120,029 25 149,724

(出典:内閣府「令和6年能登半島地震に係る被害状況等について 」令和6年12月24日 )


能登半島地震での住宅の被害は、石川県での被害が飛び抜けて多く、次いで新潟県や富山県の被害が多くなっています。
最も被害の多い石川県の中では、能登半島に位置する輪島市、珠洲市、志賀町、七尾市に被害が集中していました。

国土交通省が公表したデータによると、被害が集中した地域では、住宅被害が大きくなったことに影響した可能性があるいくつかの共通点があったことが判っています。

住宅被害が大きかった地域の特徴

  • 木造の住宅の割合が高い(約8割以上、全国平均は6割弱)
  • 比較的古い年代に建築された住宅が多い
  • 1980年以前に建築された住宅の割合が特に高い(5~6割強、全国平均は22.4%)
  • 空き家率が高い市町が多い(約2割以上、全国平均は13%)

4つの特徴のうち、特に住宅被害に影響したと思われるのが「1980年以前に建築された住宅の割合が特に多い」という点です。
全国平均22.4%に対して、被害地域では5〜6割強と大変多くなっています。

建物の耐震性に関する法律は、過去の大地震などを教訓にして改正されてきた歴史があります。
1978年に発生した宮城県沖地震をふまえて1981年に新耐震基準が導入されており、新耐震基準の前と後では建物の耐震性に大きな差があると言われています。
能登半島地震では多くの建物被害がありましたが、新耐震基準前に造られた住宅が多かったことが関係している可能性があります。

一方で腐朽・破損がある住宅の割合は特に高くなかったこともわかっており、震災前は問題なく居住できていた住宅が多く被害を受けたことが推測されます。

(参考:国土交通省「R6能登半島地震の被災市町村に関する住宅関連データ」)

富山県内の住宅被害数(市町村別)

富山県内では2万棟を超える住宅被害がありました。
下の表は富山県内の住宅被害数を市町村別に集計したものです。



全壊 半壊 一部破損 未分類 合計
富山市 2 49 3,433 18 3,502
高岡市 152 5,338 5,490
魚津市 88 88
氷見市 233 501 5,968 6,702
滑川市 212 212
黒部市 241 2 243
砺波市 199 199
小矢部市 10 40 1,817 4 1,871
南砺市 251 251
射水市 14 63 3,309 3,386
舟橋村 33 33
上市町 151 151
立山町 85 85
入善町  73 73
朝日町 143 143
合計 259 805 21,341 26 22,429

(出典:富山県「令和6年能登半島地震による被害及び支援状況」2024年11月29日発表)

氷見市の被害

表によると、全・半壊の住宅被害は県内でも特に氷見市に集中していたことがわかります。
一部破損を含めた全体の被害数でも県内では最多となっています。

氷見市は震源地に最も近く、震度が5強であったことに加えて、海沿いの地区で広範囲の液状化現象が発生したことが大きく影響しています。全壊した建物は、氷見市中心市街地の北大町、栄町、地蔵町、幸町、比美町に集中していましたが、これは液状化被害が発生したエリアと一致しています。

射水市、高岡市の被害

射水市や高岡市での建物被害は海沿いのエリアに集中しています。
射水市新湊や高岡市伏木など沿岸部では能登半島地震により深刻な液状化被害が発生しました。
液状化した地域では建物被害が多く報告されています。

高岡市では横田地区など海から離れた地域でも液状化が起き建物が大きく傾くなどの被害がありました。

小矢部市の被害

小矢部市での住宅被害のうち全・半壊の深刻なものは埴生地区と石動地区に集中していました。
特に山あいの盛り土で造成された住宅街で全半壊の被害が多く、地震で地盤が緩んだことが住宅の損壊などにつながった可能性があります。



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火災

大火災が発生した輪島市


輪島市内の火災被害(石川県HPより)

輪島市内の火災被害(石川県HPより)


令和6年能登半島地震では、地震に伴う火災も多数発生しています。

なかでも震度6強の揺れを観測した石川県輪島市の河井町朝市通り周辺で出火した火災は,およそ240棟約49,000m2が延焼した甚大な被害となりました。

被災地は1000年続く朝市の歴史がある古い街並みであり、防災の観点から見ると防火性の低い古い木造住宅が密集する状態にありました。

しかし、火災がこれほどまで大きな被害になったのは「古い住宅が密集していたから」ということだけが理由ではありません。
火災発生時の輪島市河井町付近では、

・地震による断水により消火栓が使用できない
・建物倒壊により使用できない防火水槽もあった
・隣接する河川の水位の低下や大津波警報の発表により河川および海からの取水が困難となるなど消火のための水源不足が生じた

など、大地震により消火水源が不足する異常事態が発生していました。
輪島市河井町は海や河口近くに位置しており、平時であれば消火用の水源に困らない地域であったと思われます。

大地震発生時には揺れにより火災が発生しやすくなるだけでなく、消火活動も通常時のように行えず、火災の規模が大きくなる危険性があることがわかります。

富山県内の火災

富山県内では令和6年能登半島地震により5件の火災が発生しています。
それぞれの火災の概要は以下の表のとおりです。



市町村 焼損程度 火元建物用途 覚知時刻 焼損棟数(棟) 焼損床面積(㎡) 死傷者数(人) 火災要因 火災の概要
富山市 部分焼 病院 1月1日 18:13 1 2 なし 揺れ 地震の揺れにより、アルコール入りの医療機器が落下し、
何らかの火源により引火し出火したものと推定。
ぼや 住宅 1月2日 8:15 1 若干 なし 火気設備等 地震の揺れにより転倒した暖房機器が床板に接触し出火したものと推定。
高岡市 部分焼 工場 1月1日 16:31  1 19 なし 火気設備等 地震の揺れにより炉内の高温溶解亜鉛があふれ、工場及びトラックの一部を焼損したものと推定。
魚津市 ぼや 高齢者福祉施設 1月1日 16:21  1 0 なし 電気配線  地震の揺れにより、天井裏の電気配線等が何らかの原因で出火したものと推定。
氷見市 その他 1月1日 17:07  - 0 なし 電気配線  地震により、漁港湾内の海水が被覆破損の電気ケーブルに接触し、ショートして出火したものと推定。

地震火災の要因

これらの火災は、地震の揺れによる「引火物の落下」「火器設備の転倒」「電気配線の破損」などが原因となり発生しています。
令和6年能登半島地震のように冬季に発生した地震では、暖房機器の転倒や、落下物が暖房機器と接触して発火するなどによる出火の可能性が高くなるため注意が必要です。

総務省消防庁は、「地震火災を防止するポイント」として以下の6つを挙げています。
ご自宅を地震火災から守るためにぜひ一度チェックしていただければと思います。

○ 地震火災を防ぐ主なチェックポイント

✓ 住まいの耐震性を確保する
✓ 家具等の転倒防止対策(固定)を行う
✓ 感震ブレーカーを設置する
✓ ストーブ等の暖房機器の周辺は整理整頓し、可燃物を近くに置かない
✓ 住宅用消火器等を設置し、使用方法について確認する
✓ 住宅用火災警報器(連動型住宅用火災警報器などの付加的な機能を併せ持つ機器を推奨)を設置する

(出典:総務省消防庁「地震火災対策について」)



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ライフライン

断水

能登半島地震では多くの断水が発生し、被災地(石川県、富山県、新潟県、福井県、長野県、岐阜県)での断水戸数は136,440戸となりました。

そして石川県が、「早期の復旧が困難(土砂崩れや建物の倒壊が原因で作業員が立ち入れない)な地域を除いて断水が解消した」と発表したのは2024年5月31日で、地震発生から5カ月が経過していました。
復旧までに5カ月も要した理由としては、「浄水場や配水池など水道の基幹施設、基幹管路の耐震化がされておらず大きな被害が出た」ことや「被災地への道路の寸断や雪などの影響で復旧作業が難航した」「作業員の宿泊場所などの拠点不足」などが挙げられています。

水道を含めたライフラインの停止が長引くことは被災地での生活を大変不自由にし、災害関連死などの人的被害にもつながります。

富山県内での断水発生状況

富山県内では6市(富山市、高岡市、氷見市、小矢部市、南砺市、射水市)で合計18,937戸の断水が発生しました。

特に氷見市では14,000戸と被害が集中しており、また復旧にかかった日数も18日間と他市に比べて長引いています。
氷見市は震度5強の強い揺れと液状化現象により市内の全域で配管が破損しました。また、配水管の被害が広範囲であったことと、倒壊家屋など宅地側の漏水も非常に多く発生したことなどから、原因箇所の特定と復旧に多くの日数を要しました。



市町村名 断水戸数 断水期間 被害の状況
富山市 85 1/1~1/2 配水管破損
高岡市 4,090 1/1~1/5 配水管破損
氷見市 14,000 1/1~1/18 配水管破損
小矢部市 525 1/1~1/9 配水管破損
南砺市 27 1/1~1/3 配水管破損
射水市   210 1/1~1/3 配水管破損


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停電

30日間続いた停電

能登半島地震では、石川県で最大4万戸、富山県で最大90戸、新潟県で約1500戸の停電が発生しました。

熊本地震(最大48万戸が停電)と比較すると停電戸数は多くありません。理由は、熊本地震に比べて変電所や送電設備(鉄塔など)の被害が少なく、広域の停電が起きなかったためです。

一方で復旧までには30日かかり、熊本地震が5日で復旧したのに対して長い日数を要しています。
能登半島地震では送電設備の被害は少なく済みましたが、配電設備(電柱や電線など)の損傷が多く被害箇所が広範囲に存在していたため、復旧作業に時間と労力が必要でした。また、土砂災害やがれきの発生等により作業車両等が入れないなどの状況も発生していました。
これらの理由により珠洲市や輪島市などの奥能登地域では特に停電が長期化しました。

地震被害の比較(能登半島地震と熊本地震)



能登半島地震(R6) 熊本地震(H28)
最大停電戸数 約4万戸 約48万戸
主な設備被害 送電 鉄塔 1基電線 0径間 鉄塔 16基電線 1径間
配電  支持物 約3,100本電線 約1,700箇所 支持物 約3,200本電線 約900径間
停電復旧までの日数 約30日※進入困難箇所除く 約5日※進入困難箇所除く

出典:経済産業省 産業保安グループ 電力安全課「令和6年能登半島地震の対応について」

富山県内での停電被害

富山県では小矢部市で約90戸が停電しましたが、1月1日20:00までには解消されました。
停電規模は小さく、また迅速に解消されています。
(参考:経済産業省「石川県を震源とする地震に伴う被害について(1月1日)」)



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ガス

都市ガス

石川県や富山県では、ガスの導管の損傷や差し水により各戸への供給が停止する被害がありました。
事業者は富山市の日本海ガス(株)で27戸、石川県金沢市の⾦沢エナジー(株)が121戸でした。
いずれも1月4日までに復旧し供給が再開しました。

都市ガスの製造事業者では、新潟県上越市の「INPEX直江津LNG基地」において地震発生後から安全確認作業のために送ガスを停止し、その後津波警報発表により安全確認作業を中断しましたが、1月2日には安全確認が完了し送ガスが再開されています。これによる供給への支障はありませんでした。

コミュニティガス

また石川県ではコミュニティガス(旧簡易ガス)への被害も発生しています。
揺れや液状化、土砂崩れが原因でガス漏れ等が生じたことにより、3事業者7団地でガスの供給に支障が発生し509⼾が被害を受けました。

表・令和6年能登半島地震によるガス供給への被害



種別 業者数 被害戸数
都市ガス ⼀般導管ガス事業者 2社 148
ガス製造事業者 1社 -
コミュニティーガス 3社7団地 509

参考:経済産業省「石川県を震源とする地震に伴う被害について(1月4日)」、経済産業省 経済産業省産業保安グループ
ガス安全室「令和6年能登半島地震の対応状況等について 2024年3⽉11⽇」)



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人的被害

能登半島地震で多くの尊い命が失われるとともに、多くの方が負傷されました。

亡くなられた方々のご冥福をお祈り申し上げますとともに、ご家族へ心よりお悔やみを申し上げます。また負傷された方々には心からお見舞い申し上げますとともに、1日も早いご回復をお祈りしております。

全国の人的被害

人的被害の内容や人数を県別にまとめたものが下の表です。

1870人の被害のうち、石川県での被害が1739人と9割以上もの高い割合になっています。

内閣府の令和6年防災白書によると、能登半島地震の死因(災害関連死を除く)のうち約4割が「圧死」、約2割が「窒息・呼吸不全」で、多くの方が倒壊した建物の下敷きとなったとみられています。また、寒さが影響して亡くなった「低体温症・凍死」が1割強とされています。



都道府県  人的被害
行方不明者  負傷者  合計 
死者  うち 災害関連死  重傷  軽傷  小計 
人  人  人  人  人 
新潟県  11  43  54  58 
富山県  14  42  56  58 
石川県  483  255  378  876  1,254  1,739 
福井県 
岐阜県 
愛知県 
大阪府 
兵庫県 
合 計  489  261  403  976  1,379  1,870 

(出典:内閣府「令和6年能登半島地震による被害状況等について(令和6年12月24日)」)

また、災害関連死の255人が直接死の228人を上回っていることも特筆すべき点です。

2016年熊本地震の災害関連死は222人とされています。能登半島地震ではすでにこの人数を超えていますが、石川県内の自治体にはさらに200人ほどのご遺族から申請が出されていて、今後審査が進むとさらに増える可能性があります。

災害関連死とは、「災害による負傷の悪化又は避難生活等における身体的負担による疾病による死亡」 のことを言います。
石川県が2024年12月24日に公表した内容によると、能登半島地震において災害関連死と認定された方のうち、70代以上の方の割合は9割と高齢の方に被害が集中していたことがわかっています。

また遺族などが公表に同意した115人の方に関して、死亡の原因に関するデータも公表されました。
その内訳は「地震のショックや余震への恐怖による心身の負担」が最も多く、続いて「停電や断水による心身の負担」「避難所生活での心身の負担」が多くなっています。

震災後の被災地では、いつ来るかわからない余震への恐怖を感じながら、停電した自宅や避難所や車内などで十分な暖も取れず、断水によりトイレや食事の不自由な環境下で飲料や食事を控えながら生活する日々を過ごされる方が多かったのではないかと思います。長期間にわたり心身ともに大変なストレスを経験されたことは想像に難くありません。
高齢の方はとりわけ体力が衰えていたり持病がある方も多く、そうした生活が身体に堪えたことと思います。

富山県内の人的被害

富山県内で亡くなられた方は90代の女性と80代の男性の2名で、いずれも災害関連死と認定されています。

2名の方は、地震による怪我(落下物や転倒のため)と地震後の生活環境の変化が原因で体力が低下したことにより、既往症が悪化して亡くなられた点が共通していました。

また県内では、13名の方が重症、41名の方が軽傷と合計56名の方が負傷されています。

富山市では店舗の天井が落下した影響で8名(うち2名は重症)が怪我をされました。射水市では80代の方が庭の灯籠の下敷きになり骨折されています。(北日本新聞2024年1月3日より)



人的被害の内容 人数 地域
死者 2
(うち災害関連死) 2 高岡2
行方不明者 0
負傷者 重症 13 富山5、高岡2、氷見2、射水4
軽症 41 富山 13、高岡3、魚津2、氷見9、
黒部5、砺波1、小矢部2、射水3朝日3
合計 56


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まとめ:大地震から命を守るために

能登半島地震は150kmにも及ぶ長距離の活断層を震源とした地震で、最大震度7の強い揺れと大規模な地殻変動を引き起こしました。
その地震の規模M7.6は、活断層による地震として日本国内では過去100年間で最大規模です。

大地震の発生により被災地ではあらゆる困難な状況が発生します。
能登半島地震では、海岸隆起による漁港・港湾の機能不全、津波、液状化現象、住宅の倒壊や損傷、火災、ライフラインの停止を初めとした様々な被害が被災地の人々の生活を困難にし、多くの方が避難生活を余儀なくされました。
亡くなられたり怪我をされた方が大勢いらっしゃいます。

富山県の周辺には、遠くない将来に大地震を発生させる可能性が高い活断層として、「砺波平野活断層帯」「呉羽山活断層帯」「森本・冨樫活断層帯」「邑知潟活断層帯」が存在しています。もしこれらの活断層帯による地震が発生した場合、富山県では能登半島地震をはるかに超える大きな被害が想定されています。


当記事の最後に、今後発生するかもしれない大きな地震から命を守るために必要な対策をおさえておきましょう。
能登半島地震で起きたことを教訓にし、6つにまとめました。

1. 避難場所や避難方法の確認

津波や崖崩れなどが懸念される地域では特に迅速な避難が必要となります。
事前にハザードマップで想定浸水地域を確認し、避難場所や避難経路を考えておきましょう。

能登半島地震では、できるだけ遠くまで逃げようと車で避難した方が多く渋滞が発生しました。
渋滞中の車が津波に襲われた東日本大震災の反省をふまえて多くの自治体では「原則徒歩」での避難を呼びかけています。

高齢の方やご病気などで車で移動せざるを得ない場合も含めて、最善の避難方法や避難経路を事前に家族で話し合い共有しておくことが重要です。

▷関連リンク

2. 家具の落下や転倒防止

能登半島地震では家具などの落下や転倒による負傷が多発しました。

近年発生した地震では、負傷の原因の約30~50%が家具類の転倒・落下・移動、30%がガラスの飛散によるものと言われています。
家具などを固定しガラスの飛散防止対策をすれば怪我の9割を防ぐことができます。

また、転倒により家具が避難経路を塞いでしまったり、火災の原因になる可能性のある家具の配置を見直すことも重要です。

地震に備えて室内の家具の設置を見直してみましょう。

▷関連リンク

3. 食料や飲料、生活必需品の備蓄

大地震により、上・下水道や電気、ガスなどのライフラインが長期間にわたって停止する可能性があります。
人的被害の項目でも述べましたが、十分でない飲料水や食料、トイレ環境、暖の取れない環境は被災者の健康を損ね、最悪の場合災害関連死につながります。

家族の人数や状況に合わせた、飲料・食料、生活必需品の備蓄をしましょう。

▷関連リンク

4.(持病のある方は)災害時の治療に備える

能登半島地震の被災地では、持病のある患者さんに薬が行き渡らないという問題が起きました。
持病のある方は、避難先でも服薬などの治療を継続できるように準備をしておくことが必要です。

▷関連リンク

5. 災害関連死について知る

能登半島地震においては、災害関連死の人数が直接死を上回りました。
今や災害関連死を防ぐことは、大震災から命を守るために最重要なことの一つです。

災害関連死はどのようにしたら防ぐことができるのでしょうか?
震災後に体調を崩さないために個人でできること、災害関連死について事前に知っておきたいことを関連リンクにまとめました。

災害関連死9割が70代以上の方とされています。特に高齢の方やそのご家族の方はご一読ください。

▷関連リンク

6. 建物の耐震化

能登半島地震が原因で亡くなられた方のうち、死因が公開されている方の約8割は建物の倒壊が原因とされています。
これは過去の大地震でも同様で、熊本地震でも約8割、阪神淡路大震災では9割でした。
震災から命を守るために、家屋の耐震性は非常に大きな鍵となります。

では、自宅の耐震性はどのように確認したらよいでしょうか?

実は建物の建築された年と耐震性には大きな関連があり、耐震性については「1981年以前に建てられた建物」が大きな地震に耐えられない可能性が高いとされています。

以下の図には、建築基準法の改正の歴史と要点がまとめられています。
耐震性については、新耐震基準が導入された1981年と、新耐震基準がさらに厳格化された2000年に大きく改正されています。


(出典:富山県HP)

(出典:富山県HP)


能登半島地震で被害を受けた建物についても、建築年によって被害が異なったことが判明しています。

国土交通省が2024年11月1日に公表した能登半島地震の建築物被害に関する中間報告書によると、輪島市、珠洲市、穴水町などの建築物6873棟を調査した結果(下表に一部抜粋)、1981年5月以前の旧耐震基準で造られた建物については38.2%が大破もしくは倒壊・全壊していました。

一方、1981年導入の新基準で1981年6月〜2000年5月までに造られた建物では15.2%にとどまり、旧耐震基準で造られた建物の半分以下に被害が縮小しています。さらに耐震基準が厳格になった2000年6月以降に造られた建物ではわずか1.6%と、大幅に被害が縮小しました。

(出典:国土交通省「令和6年能登半島地震建築物被害調査等報告」)

表・令和6年能登半島地震における木造建物の建築時期別の建築物被害状況



建築時期 合計
〜1981年5月 1981年6月〜2000年5月 2000年6月〜
木造 無被害 426棟(12.5%) 237 棟 ( 26.5% ) 398 棟 ( 65.5% ) 1061 棟 ( 21.6% )
軽微・小破・中破 1644 棟 ( 48.2% ) 505 棟 ( 56.6% ) 198 棟 ( 32.6% ) 2347 棟 ( 47.8% )
大破 676 棟 ( 19.8% )  103 棟 ( 11.5% )  8 棟 ( 1.3% ) 787 棟 ( 16.0% )
倒壊・崩壊 662 棟 ( 19.4% ) 48 棟 ( 5.4% ) 4 棟 ( 0.7% ) 714 棟 ( 14.5% )
全ての建物 無被害 476 棟 ( 13.2% ) 314 棟 ( 29.8% )  487 棟 ( 66.5% )  1277 棟 ( 23.7% )
軽微・小破・中破 1753 棟 ( 48.6% )  578 棟 ( 54.9% )  233 棟 ( 31.8% )  2564 棟 ( 47.6% )
大破 696 棟 ( 19.3% ) 111 棟 ( 10.5% ) 8 棟 ( 1.1% ) 815 棟 ( 15.1% )
倒壊・崩壊 682 棟 ( 18.9% ) 50 棟 ( 4.7% ) 4 棟 ( 0.5% ) 736 棟 ( 13.6% )

大地震による住宅の倒壊から命を守るため、富山県は木造住宅の耐震診断や耐震改修に補助金を出すなど支援を行なっています。

ぜひ一度、ご自宅の耐震性について確認してみましょう。


PDFデータ:富山県「耐震診断・改修で自分の命は自分で守る!」

PDFデータ:富山県「耐震診断・改修で自分の命は自分で守る!」


▷関連リンク

富山県「耐震診断・改修で自分の命は自分で守る!」(チラシ)
富山県「木造住宅の耐震診断・耐震改修の支援制度」


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