大楠安紀ブログ

「砺波市立砺波図書館」見学会が富山県建築士会砺波支部・女性委員会共催で開催されました。
建物見学に合わせ、設計・監理された三上設計事務所益子さんと施工された佐藤工業の方から色々と興味深いお話しを聞くことができました。


砺波市民からすると分不相応とも思われる立派な図書館です。
バブル崩壊後各地で建設される図書館はほとんど複合施設となってしまった今、図書館単独施設としての建設は貴重なものとなってしましました。
となみチューリップ公園を中心に砺波市文化会館、砺波市美術館、チューリップ四季彩館、砺波高校と社会教育施設が集まる地区の一角に設立されています。
南北に通る幹線国道沿い、東西につながる高速道路ICからも近く、砺波駅からも至近距離にあります。
砺波市文化交流の拠点として素晴らしい建築物ができたと思っています。


大屋根の下のワンルームの図書館

散居村が美しい砺波平野にあって、「あずまだち」と呼ばれる住居がたくさんあります。
その「あずまだち」から「大屋根の下のワンルームの図書館」が構想されたそうです。
敷地は幹線道路に対して台形ですが、東側軒高を2,850mm、西側軒高を11,550mmと一定としたため、屋根は不思議な曲線を描いています。
大きな翼のような屋根が独特の印象を与えています。
富山県内のみならずこの特異な外観は砺波市民の誇りになると思います。



大屋根の下は大きなカーブを描いた木の天井があり、ワンルームの空間となっています。

建物東西南北四方に窓があり、東側高窓から柔らかな光が差し込みます。



今回、質疑応答の時間を頂けましたので、3点私から質問させていただきました。
(1) 書籍は日射を嫌うが、東西南北に開口部を取った理由について
(2) 複合施設の図書館が多い中、単独図書館としての設計の考え方は
(3) 入口の正面、建物の中央に子どもの部屋を配置したわけは

質問に対し、三上設計事務所の益子さんから丁寧な回答を頂きました。
(1) 書籍は日射を嫌うため北側採光が基本であるが、南側側は壁をジグザクにし南側を耐力壁壁とし開口部は東側に取るようにして日射を避けた。西側は軒を低くし、道路側に樹木を植え直接日射が入ってこないようにする。東側の高窓は一番問題があるが、開書架の書籍の回転で多少の書物の日焼けはやむなしと設計した。
(2) 図書館は本来、本が主役です。複合施設は図書館を無償のレジャー化とするもので、やむを得ない面もありますが図書館本来の教育目的から外れるものと考えています。本が建物の中心にありそこに子どもから高齢者まで来館する全ての市民が学べるような設えとした。
(3) 次の世代の主役は子どもです。子どもが中心となるような建物の配置としました。

施工面では大きなカーブを描く大屋根の施工に大変苦労した話を頂きました。
私が以前勤めていた会社のサッシが採用され、屋根に沿って台形のサッシが取り付けられ、ここも苦労されたと言っていました。

このような見学会を開催していただき、感謝です。


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