大楠安紀ブログ

コロナパンデミックによる社会活動が止まった状態から、ようやく抜け出した感のある今日この頃です。
しかしながら、この3年間のブランクは大きく以前と同じような状況には戻らず、新たな社会形態に移行すると思います。

私達「iBop」にとってホームグラウンドであるこの「ジャムハウス」での久し振りのライブです。あらためて取り組んだ曲を中心に「iBop」ならではの曲を演奏します。

今年は多くの有名なミュージシャンの訃報を聞きました。
最初の2曲はその中でも私にとって影響を受けた方の2曲を演奏し追悼致します。

演奏できる場があって、素晴らしい楽器があり、好きな曲を演奏でき、聞いていただける方がいる。それだけでうれしくありがたいと思います。

iBop/大楠安紀(pf)、居村猛(gt)、中島伸高(b)、稲垣英晴(dr)

set list


Pinocchio (Wayne Shorter)

今年3月2日に亡くなったジャズ界のレジェンド「ウェイン・ショーター」が、ジャズ・トランペット奏者マイルス・デイヴィスの1967年に制作・発表したアルバム『Nefertiti』(ネフェルティティ )に収録したオリジナルナンバー。
重心が定まっていない浮遊感のある曲想。
曲名からはイメージできない不思議な曲です。
私のジャズピアノの師匠福田重男編曲。

Poinciana (Nat Simon)

今年4月16日に亡くなったアーマッド・ジャマル最大のヒット曲。
マイルス・デイヴィスに影響を与え、マイルスはバンドメンバーにしたかったが断ってシカゴで演奏活動を続けたことで有名です。
「ポインシアナ」はキューバ民謡を基に作られたともいわれる物憂げなバラードですが、軽快なリズムの上で様々なメロディーをアレンジして演奏するスタイルは、彼独自なものです。

All Too Soon (Duke Ellington)

「あまりにも早く」という題名の失恋の歌。デューク・エリントンが作曲したバラードナンバーで、多くの女性ジャズ歌手によって有名になりました。
エリントンナンバーのバラード演奏は私のライフワークです。

Up Jumped Spring (Freddie Hubbard)

今でもCM等で使われたりする超有名曲「モーニン」で有名なアート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズの1962年作のアルバム「スリー・ブラインド・マイス」(3匹の盲目ねずみ)のために作曲されたトランペッター「フレディ・ハバード」の代表曲。
アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズは力強い演奏で有名ですが、 「スリー・ブラインド・マイス」は、今年亡くなったウエイン・ショーターが音楽監督を務めていた時代の軽妙洒脱なアレンジと演奏が聞きやすいアルバムです。
アルバムを代表する軽やかな明るい曲となっています。

Everytime We Say Goodbye (Cole Porter)

ハードボイルド小説の傑作、レイモンド・チャンドラー作「the long goodbye」の有名な決め言葉「さよならを言うのは、少しだけ死ぬことだ。」は、コールポーター作のヒット曲「いつもさよならを」の歌詞から取られた台詞として有名です。
コールポーターは当時としては珍しく、作曲と作詞を両方やっていました。曲と詩の融和性が素晴らしいですね。
ジョン・コルトレーンの大ヒットアルバム「My Favorite Things」で表題曲の次に入っており、ライブでも常に「My Favorite Things」とセットで演奏されたました。
コルトレーンはテーマだけを吹き、アドリブはマッコイ・タイナーが演奏しています。

I Hear A Rhapsody (Fragos-Baker-Gasparre)

1941年にヒットしたポピュラーソングです。
独特のメロディーとハーモニーを持ち、多くのジャズメンに演奏されるジャズスタンダードとなりました。
愛している人の声が狂詩曲に聞こえるというラブソングです。
第二次世界大戦の時に作られた曲には、ストレートなラブソングが多いですね。

Kelo (J.J. Johnson)

モダン・ジャズにおけるトロンボーン演奏の第一人者J・J・ジョンソンが、彼の息子Kevin Louisから曲名をつけたJ.J.初期の名曲。
ビバップの代表的な曲で、若き日のマイルス・デイビスやアート・ブレイキーでの演奏が有名。
アンサンブルが凝った作りになっており、ドラマーをフーチャーした構成となっています。

Lotus Blossom (Kenny Dorham)

心にしみる演奏で人気のあるケニー・ドーハムの1959年作の有名盤『静かなるケニー』の1曲目に入っている彼の代表曲。
印象的なメロディを持つハード・バップの曲として多くの人が演奏しています。
この曲は「Asiatic Raes」と曲名を表記されることもあります。
ビリー・ストレイホーンの同名曲と重複・混同を避ける意味合いがあるようです。

Like Someone In Love (Jimmy Van-Heusen)

1944年に作られたヒット曲。
ストレートなラブソングですが、特徴的なハーモニーの流れにより多くのジャズメンが取り上げるジャズスタンダードになりました。

When Sunny Gets Blue (Marvin Fisher)

多くのジャズ歌手(特に女性)によって歌われた名曲ですが、インストでも名演が多くあります。
本田竹曠(pf)、鈴木良雄(b)、渡辺文男(ds)による1972年発表の傑作アルバム「ジス・イズ・ホンダ」でこの曲の存在を知りました。
日本人トリオ演奏の頂点の一つだと思っています。

East of the Sun West of the Moon (Brooks Bowman)

1934年に作曲された曲。曲名は北欧民話から取ったとされファンタジーの場所のようです。
世代(スイング・ビバップ・クール・モダン・フリー)を超えて、ジャズメンが好んで取り上げる名曲。
メロディー及びハーモニーの進行が心地よく色々なミュージシャンに愛されて来ました。

Raunchy Rita (Frank Foster)

エルヴィン・ジョーンズ(ds) & リチャード・デイビス(b)による1967年作のアルバム「ヘヴィ・サウンズ」の1曲目。
古いブルースチューンをイメージして作曲されたナンバー、最近の洗練されたジャズとは対極の泥臭い雰囲気があります。





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