【耐震改修】耐震改修による空き家の活用と資産価値の向上【空き家対策】
耐震改修工事のメリットがある家屋は「空き家」!?
当研究所では、「耐震改修工事を行うメリットが大きいのはどんな家ですか」と聞かれた場合には、「現在使用されていない家屋、つまり“空き家”です」とお答えすることがあります。
「誰も使用していない、今後も使用する予定のない家屋をわざわざ耐震改修するなんて、一体何のために!?」と思われるかもしれませんね。
しかしながら、耐震改修専門の建築家として多くの家屋を見て来た経験上、「空き家を耐震改修するメリットは特に大きい」と考えています。
ご存知の通り、全国の空き家は増え続ける一方であり、社会問題にまで発展しています。
空き家問題を解消する法整備や方策はまだ確立しておらず、今後も空き家が増え続け、より身近な問題になってくるのは間違いないでしょう。
当コラムを読んでいる皆さまの中にも、実際に空き家を所有され持て余している方がいるかも知れませんし、そうでない方も地震・災害大国である日本では、倒壊の危険がある“管理されていない空き家”が近隣にあることは人ごとではありませんね。
もし空き家を相続などで所有した場合、その処分をどうするか、持ち主の方はいろいろな複雑な思いを巡らされることでしょう。
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空き家は「断捨離」すべき重い荷物なのか
少し前に「断捨離」という言葉がブームになりました。
要らないものは処分して、自分が必要なものだけを残して身軽に暮らす、という考え方ですね。
相続した空き家には、亡くなった居住者の荷物が大量に残され、建物自体も老朽化しています。大きな地震でもあればいつ倒壊するかわからない状態で所有者の心配は絶えません。
古い建物は手放したくても買い手もおらず利用価値もなく、さらに維持費だけでなく相続税や固定資産税といった経済的な負担もかかってくる。
まさに「断捨離」してしまいたい重い荷物の、最たるものと言えるかもしれません。
しかし古い家屋には、その家屋が古いほど、そこに暮らして来た人の想いも詰まっているものです。
家族と過ごした幼い頃の思い出や、今よりも物のない厳しい時代に家を建てて住み守って来た先人の思いを考えると、家を取り壊すことで、これまで続いて来た家族の歴史も消えてしまうような気持ちになるかもしれません。
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さらに建築士の目線からすると、現代ではもう手に入らない資材、技術を使って建てられた古い日本建築が取り壊されるのを見るのは辛く、惜しい気持ちになることがあります。富山の古い家にはそうした貴重な建築物が多いのです。
これらは取り壊されると、もう二度と同じものが建てられることはありません。
後世に残していくには、取り壊さずに維持していくしか方法がないのです。
東京で建築士として活躍している友人が、
「東京の昔からの住宅街には当時の建築技術で建てられた素晴らしい住宅があるのだが、所有者が亡くなると取り壊され、土地が切り売りされる。売られた土地には新築の小さな家が建っていく。これを見ていると何とも言えない残念な気持ちになる。」
と言ったことがありました。
そこで私が「自分の仕事はそうした古い建物を耐震改修して活かしていくことだよ」と言うと、「良い仕事をしているなあ」と言われました。
所有される方にとって大切な家屋であれば、もし当面そこに住む予定はなくても、耐震改修によって建物の価値を取り戻したい、そして価値を取り戻した建物を活用するための手助けをしたい、というのが当研究所の仕事であり願いでもあります。
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空き家を耐震改修するメリットとは
さて、ここからが今回のコラムの本題になるのですが、空き家を耐震改修することによるメリットを挙げると次の3つになります。
1:空き家の「資産としての価値」を向上させる
2:取り壊しよりもコストが少ない
3:地域に貢献することができる
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1:空き家の「資産としての価値」を向上させる
日本における建物の資産価値についての一般的な考え方は、「新しいものは価値が高く、古いものは価値が低い」というものです。
日本では、固定資産税上の家屋の評価額も金融機関が算出する担保物件の評価額も経年によって減価する方式を採用しており、古い建物は価値の低いものとして計算されます。
市場においても「マイホームを持つ」と言えば「住宅を新築する」というイメージを持つ方が多く、欧米諸国において中古住宅の市場がとても大きく、築数百年の建物に需要があるのと比べると対照的です。
参考「国土交通省 中古住宅流通促進・活用に関する研究会 参考資料 平成25年5月」より抜粋
○全住宅流通量(中古流通+新築着工)に占める中古住宅の流通シェアは約13.5 %(平成20年)であり、欧米諸国と比べると1/6程度と低い水準にある。
○しかしながら、中古住宅流通シェアのウェイトは大きくなりつつある。
日本において中古住宅の価値が低い原因は色々ありますが、大きな原因のひとつが「著しい耐震技術の進歩」が挙げられると思います。
地震大国である日本では、建物の安全性=耐震性と言っても過言ではありませんが、耐震性について重要な基準が定められたのは昭和56年(1981年)の建築基準法改正でした。
この改正で一番重要なのは、震度6〜7クラスの大規模地震が起きても倒壊しないという条件が定められたことです。
つまりは改正前の昭和56年以前に建てられた家屋は、大規模地震が起きた場合に倒壊する可能性があるということになります。
この耐震基準の問題があるため、古い建物は安全面から見ると「価値がない」、新しい建物は安全面で「価値がある」と見られがちですが、この問題は耐震改修工事で解決することができます。
耐震工事を行い、その後のメンテナンス(特に屋根や外壁の取り替えなど。これは新築でも同じことですが)を行なっていくことで、50年、100年でも建物の寿命は伸ばすことができるのです。
日本でも今後、改修技術の発達と浸透とともに、中古住宅の価値についての考え方は、欧米のもの(改修して長く使う、建物の歴史に価値がつく)に近づいていくと考えています。
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2:解体よりもコストが少ない
実は、家屋を解体してしまうよりも耐震改修をする方がコストがかからないという場合が多くあります。
そのポイントは、耐震改修工事に対する市町村からの補助金と、土地にかかる固定資産税です。
耐震改修工事への補助金
研究所が所在する富山県砺波市では、「耐震改修工事に要した経費の5分の4の額(補助限度額100万円)」を県と市で助成しています。
一般的な耐震改修費用は100万円〜150万円が一番多いと言われています。
当研究所の施工実績では富山県では建物の床面積が大きく平均157万円です。
この補助金制度を利用した結果、施主様が負担する耐震改修工事費用が10万円〜50万円程度で済む例も少なくありません。
当研究所の施工実績では、お施主様の耐震改修平均自己負担額は49万となっています。
一般的な住宅の解体費用は100万円以上になるため、耐震改修工事をした方が経済的負担が抑えられます。
(参考 財団法人日本建築防災協会「木造住宅の耐震改修の費用」)
土地にかかる固定資産税
土地の上に住宅が建っている場合、「住宅用地特例」という制度によって、土地の固定資産税は1/4〜1/6と大幅に軽減されています。
空き家である住宅を解体することによって、家屋の固定資産税はかからなくなりますが、土地の固定資産税がこの軽減の対象から外れてしまうため、解体前よりも固定資産税の総額が上がってしまうケースが多々あります。
その他の税制上の優遇措置
所得税
当該耐震改修に係る標準的な工事費用相当額(上限:250万円)の10%をその年分の所得税額から控除
固定資産税
耐震改修をした家屋の翌年度の固定資産税が1/2に軽減
*ただし、軽減適用のための条件に該当する必要があります
参考:国土交通省HP 耐震改修に関する特例措置
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk2_000025.html
国土交通省のウェブサイトです。政策、報道発表資料、統計情報、各種申請手続きに関する情報などを掲載しています。
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3:地域に貢献することができる
平成7年(1995年)の阪神大震災では、特に被害の大きかった地区の家屋は、まさに全棟全壊の状況であったと言います。
このような想定外の大規模地震が発生した際、体育館や公民館といった一般的な避難場所以外に、耐震性を備えた防災の拠点が住宅街の中に存在することが、人命救助活動の成否の分かれ目となる場合があります。
高岡市の博労町自治会「まちかどサロン」の例
博労町自治会は2017年度に町内の空き家を改修し、集いの場や防災拠点となる「まちかどサロン」を開きました。
町内の空き家となっていた家屋について地元の人々が自ら活用方法を検討し、誰もが交流できる場所に改修。入口の近くにはキッチンカウンターが設置されており、コーヒーなどを飲みながら語り合えます。
会合などに利用できる和室からは、中庭の景観を楽しむこともでき、会話に花が咲きます。
「幅広い世代の人が、気軽に立ち寄れる場所になってほしい」と、博労町自治会長の川口宏さん。
サロンをつくるにあたっては、防災対策なども念頭におきつつ、ワークショップを開いて各世代の意見を募りました。
「高齢者が話し合う場所や、放課後に子どもたちが集まれる場所など、さまざまな利用の可能性を探っていきたい」と語り、今後の活用に期待を寄せていました。
(高岡市HPより)
https://www.city.takaoka.toyama.jp/ex/koho/kou/kou2/1805/town/index3.html
博労町の例の様に、空き家が耐震改修等されることで、日頃は住民の方の交流の場や医療の場として、災害時は災害活動の拠点として活用することができ、地域に貢献することもできます。
私自身も、この様に地域の拠点として空き家が活用されることが今後の社会において重要なことだと考えています。
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空き家の活用についてお話ししてきましたが、いかがでしたでしょうか。
耐震改修を専門として取り組んできた中で、空き家問題とその活用については特に関心が大きいところです。
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当研究所の耐震改修工事の特徴
当研究所の耐震改修では「耐震改修と施主様の希望を両立させるプランニング」を行なっています。
耐震改修基準を満たすためには、筋交いや壁の数や位置など、設計上の制約がどうしても出てくるのですが、施主様には間取りやデザインなどのご要望があるかと思います。
耐震改修を専門とする当研究所では、どちらも両立するための設計のアイデアの引き出しを数多く持っていますので、施主様の希望を叶えるプランニングをいたします。
今、砺波市で行っている空き家の耐震改修がもうすぐ完成します。
オープン記念イヴェントとして耐震改修セミナーを開催しますので、ご興味ある方は是非来て下さい。
実際の耐震改修現場を見られる機会は滅多にないですよ。
日時:12月15日(日)13:15から
場所:砺波市新富町2-41 ささえるさんの家となみ
空き家の耐震改修についてご検討の方は、ぜひお気軽にご相談ください。
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