【耐震改修のプロによる徹底解説】富山県における巨大地震の可能性(富山県に地震は来ない?)
富山県では近年大きな被害を出すような大地震が発生していません。
そのため、富山県にお住まいの皆さまには「富山は地震が少ない県だ」と感じている方も多いのではないでしょうか。
しかしながら東日本大震災以降、国内ではその余震のほかにも熊本地震などの甚大な被害をもたらす大地震が続いています。
2023年5月5日には隣県の石川県能登半島で最大震度6強の大地震が起きたことは記憶に新しいですね。
【参考・気象庁 報道発表資料】
令和5年5月5日14時42分頃の石川県能登地方の地震について
https://www.jma.go.jp/jma/press/2305/05a/202305051640.html
今回の記事では、富山県で過去に起きた大地震を振り返るとともに、直下型地震を引き起こす可能性がある富山県の活断層についてご紹介します。
さらに、今後30年間で富山県に大地震が発生する確率についても、データをもとに詳細に解説します。
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【追記(2024/12)】
2024年(令和6年)1月1日に『令和6年能登半島地震』が発生しました。(М7.6 / 最大震度7)
令和6年能登半島地震以降の富山県の大地震リスクについて、最新の解説記事を公開しましたので当記事と併せてご覧ください。
最新データで読み解く富山県の大地震リスク / 令和6年能登半島地震後の地震予測を徹底解説
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過去100年、富山県で起きた大地震
はじめに、近代に起きた富山県の大地震を見ていきましょう。
気象庁のデータを参考に、1922年から2021年までの100年間に富山県で大地震が何回あったのか調査しました。
1922年から2021年までの100年の間で富山県にて観測された大地震
富山県で震度5弱以上を記録した地震は、1930年の大聖寺地震と2007年の能登半島地震の2回でした。
いずれの地震も震度5弱が観測されています。
なお2007年の能登半島地震では富山県内の負傷者は13名、住宅の倒壊や破損などは報告されておらず、建物被害はほとんどありませんでした。
(出典:内閣府「平成19年(2007年)能登半島地震について 」)
県別で比較すると、富山の2回は全国で最も少ない回数となり、このことから富山県は過去100年間において「大地震が少ない県第1位」であると言えます。
富山に住む人の多くが「富山県は地震が少ない」と感じているのは、こうしたデータに実際に表れているのです。
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【さらに過去にさかのぼると─】有史以来、富山県で起きた大地震
過去100年では全国有数の地震の少なさである富山県ですが、それ以前についてはどうなのでしょうか。
富山県に被害を及ぼした有史以来の地震について調査しました。
富山県に被害を及ぼした主な大地震
863年 越中・越後地震 / 1586年 天正地震
平安時代に書かれた古い歴史書(日本三代実録)によると、863年に越中・越後地震(M不明)という大地震があったようです。この地震により富山県や新潟県では山崩れ・民家倒壊・湧水などの被害があり、多数の圧死者が出ました。
次に記録が残るのは、1586年の天正地震です。
天正大地震は多くの歴史書に書かれており、被害地域の記録が日本海の若狭湾から太平洋の三河湾に及ぶ、日本史上例のない大地震でした。マグニチュードは不明ですが、7.8または8.2程度のかなり巨大な地震であったと推測されています。
天正地震では、現在の高岡市の南西にあった越中木舟城が崩壊陥没し、城主の前田秀継(前田利家の弟)夫妻を含め多数が圧死したとされています。
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1858年 飛越地震
1858年には、現在の富山・岐阜県境の跡津川断層を震源に発生した、M7.0 - 7.1と推定される大地震「飛越地震」が発生しています。
飛越地震の震度分布図
飛越地震により、富山県では下の図の跡津川断層帯に沿う集落で特に大きな被害が生じました。
さらに富山平野東部では、多数の家屋倒壊、富山城の石垣などの破損や死者40~50名の被害が生じました。
そして地震による大規模な山崩れが発生したことにより常願寺川などに堰止め湖が形成され、余震で堰止め湖が決壊して下流の平野部に甚大な被害をもたらしました。
その被害は死者140人、家屋倒壊および流失は1612棟にものぼったとされています。
上の画像は、富山県立図書館に所蔵されている『地水見聞録』の市中破裂略図。
飛越地震の被害について描かれています。
住宅や蔵などの建物が全壊し下敷きになる人、人々が逃げ惑う様子、地割れが起きて水が噴き出す様子などが見て取れます。
飛越地震の被害が甚大であったということが、この絵からよく伝わってきます。
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1891年 濃尾地震
1891年には、M8.0の日本史上最大の直下型地震である濃尾(のうび)地震が発生しています。
濃尾地震では岐阜県や愛知県を中心に広い範囲で大きな被害があり、死者は7,273名、負傷者17,175名、全壊家屋は142,177戸にものぼりました。
富山でも2棟の家屋が全壊するなどの被害があったようです。
濃尾地震の震度分布図
有史以来を振り返ると、富山県でも多くの人命や建物を奪った大地震が何度も発生しており、富山は決して大地震の被害とは無縁な土地ではないということがわかってきます。
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富山県の主要な活断層は5箇所
さらに、もっと長い地球のサイクルから富山の大地震について調べてみましょう。
大地震の発生確率を考える際に、非常に重要になる要素が「活断層」です。
「断層」は地球の内部にある岩盤プレートがひずみにより壊れてずれたものを指しますが、断層のうち「過去に繰り返し活動し、将来も活動する」と考えられるものが「活断層」と呼ばれています。
この「活断層」は数千年という大きな単位で活動し、「直下型地震」を引き起こします。
日本で発生する地震には大きく分けて「海溝型地震」と「直下型地震」の2つがあります。
大きな被害を引き起こす「直下型地震」
直下型地震は海溝型地震と比較するとマグニチュードの規模が小さいのが通常です。
しかし、生活の場である内陸部で発生するため、しばしば大変な被害を引き起こします。
例えば、甚大な被害をもたらした1995年の阪神・淡路大震災も、六甲・淡路島断層帯の一部が活動して発生したものでした。
日本全国には活断層がおよそ2000箇所もあると言われますが、そのうち活動度や活動した際の社会への影響度等が大きいとされているのが「主要活断層」です。主要活断層の数は全国に114 箇所です。
近年では大地震が少ない富山県ですが、実はこの主要活断層114箇所のうち、5箇所もの主要活断層が富山県に存在しているのです。
以下がその一覧です。
- 跡津川断層帯
- 牛首断層帯
- 庄川断層帯
- 砺波平野断層帯・呉羽山断層帯
- 魚津断層帯
それぞれの活断層の場所は以下の図を参照ください。
活断層の一つ「砺波平野断層帯・呉羽山断層帯」はSランク(発生確率3%以上)
5つの活断層のうち、特に注意が必要とされているのが「砺波平野断層帯・呉羽山断層帯」です。
この活断層は、今後30年間での地震の発生確率は最も高い「Sランク(発生確率3%以上)」に分類されています。
また、魚津断層帯も次にリスクの高い「Aランク(発生確率0.1〜3%未満)」と位置付けられておりこちらも注意が必要です。
その他の比較的確率が低い断層帯についても、活断層がある限りいつでも活動が起こる可能性があり、決して安全を意味するわけではありません。
活断層が集中している富山県では、数千年という大変大きなサイクルの中ではありますが、いつ大きな直下型地震が起きてもおかしくないという状況であると言えます。
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今後30年間に大地震が発生する可能性
ここまで、富山県における大地震の歴史と、数千年単位で直下型地震を引き起こす活断層について解説してきました。
ここからは、今後30年間の大地震の発生確率について見ていきます。
下の地図をご覧ください。
このデータは文部科学省が作成・公表している「全国地震動予測地図2020年版」によるものですが、震度6弱以上の大地震発生の確率が、色分けで表されています。
確率論的地震動予測地図
地図上の赤色の部分は6%〜26%と、かなり発生確率が高い地域と言えますが、富山市・射水市・高岡市・砺波市・小矢部市・南砺市・氷見市などの一部が該当しています。
富山市や高岡市などの特に人口の多い地域に赤色が集中している点も気になるところです。
さらに、 震度を「6弱→5弱」へと変更して「震度5弱以上の揺れに見舞われる確率」を抽出しました。
結果は下の地図をご覧ください。
リスクの高い地域が紫で塗られています。
富山県内の半分以上の地域で30年以内に26%〜100%の確率で震度5弱以上の揺れに見舞われる可能性
県内の半分以上が、最もリスクの高い紫色に分類され「30年以内に26%〜100%の確率で震度5弱以上の揺れに見舞われる」地域となりました。
近年は大きな地震の少ない富山県です。
しかし、遠くない未来には震度5以上の地震が高確率で発生することが予測されています。
このデータからわかるのは、これまでは大きな地震の被害がなかったとしても、今後もずっと地震の被害を受けず安全に暮らせるとは限らないということです。
決して楽観視することなく、家具の固定・食料や飲料の備蓄や避難経路の確認などを行い、もしもの時に備える必要があります。
皆さんはこの結果についてどんな印象を受けられましたか?
およそ予想通りでしょうか、それとも予想以上に確率が高いでしょうか。
私自身はいつも「日本に住んでいれば地震のないところはない」と考えてはいますが、こうして自分の住む地域の地震発生確率がはっきり示された地図を見るとやはり、「地震への備えは必ずしなくてはいけない」と改めて思わされました。
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建物の耐震改修が十分でない富山県の状況
大地震の備えとして心配なことのひとつが、家屋などの建物が地震に耐えうるかということではないでしょうか。
過去の大地震による建物被害について調べてみると、倒壊などの大きな被害は1981年以前に建設された古い木造住宅に集中しています。
1981年は建築基準法改正により耐震基準が変更となった年です。
富山県は住宅の耐震化を進めていますが、県内の住宅総数(H25調査)379,800戸の内、28%の105,300戸とかなり高い割合の住宅で「耐震性が不十分」とされています。
富山県でなかなか耐震改修が進まない理由を分析してみますと、以下のような事が考えられます。
- 近年、富山県に大きな地震が起きておらず、地震災害に対しての意識が低いこと
- 富山の住宅は床面積が大きく、加えて障子で囲まれ壁の少ない部屋が多く、改修費用が比較的高くなること
- 診断・設計、補助金申請、改修工事と業務が多岐にわたり、古い建物を専門に一貫して対応している業者が少ないこと
当建築事務所ではこのような状況の中、富山県特有の住宅の特徴を熟知した「木造住宅耐震改修のプロフェッショナル」として木造住宅の耐震改修に取り組んでいます。
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油断せずに大きな地震に備えよう
当建築事務所は
・耐震診断
・耐震設計
・補助金の申請
・耐震改修
と一貫して木造住宅の耐震改修を行っています。
耐震改修に対する方針は以下のとおりです。
- 最小限の費用で必要とされる耐震性能を満たした改修を行います。
- お施主様の視点で現場に密着した、診断から設計・改修まで一貫した耐震化を行います。
- 補助金取得や減税申請、金融機関からの融資等をお施主様の手間を最小限に対応します。
所有される家屋の耐震性に不安をお持ちの方は、耐震診断・耐震改修についてぜひ一度当建築事務所までご相談下さい。
耐震診断・改修に関するお問い合わせはこちら
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【追記(2024/12)】
2024年(令和6年)1月1日に『令和6年能登半島地震』が発生しました。(М7.6 / 最大震度7)
令和6年能登半島地震以降の富山県の大地震リスクについて、最新の解説記事を公開しましたので当記事と併せてご覧ください。
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木造住宅耐震改修研究所
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